『透明な国』 文化構想学部三年 岡粼綾修

昭和六十二年出生の小生にとって、実際に見聞してきた日本社会なるものは、まさに喪失の連続であった。幼い頃、豪邸の各部屋、便所、風呂を一々施工費用つきで紹介し、持ち主は借金を抱えていて豪邸の買い手を探している旨伝える番組を観た記憶がうっすら残…

『記憶の風化 ―被爆3世として』 国際教養学部1年 鶴田絢女

東京に住む学生の何%が原爆投下の正確な日時を答えられるでしょうか。今年の8月6日で広島は被爆67年を迎えました。広島県民にとって、8月6日午前8時15分は特別な意味を持った時です。広島の友人達は前日からTwitterやFacebookなどでこの瞬間を忘れてはなら…

『SNSにおける言説』 政治経済学部1年 井守健太朗

SNSというものをみなさんはご存じだと思う。Social Network Serviceの略称であるSNSは、インターネット上において、リアルタイムで国境を越えて多くの人と繋がることが出来るツールとして、多数の現代人が利用している。代表的なものとしてTwitterやFacebook…

『他者からの承認』 政治経済学部1年 小林圭

現在、世界には約70億の人がいる。日本にも約1億2,500万の人がいる。これだけ多くの人がいて自分の存在をどうとらえるべきか。果たして私たちは掛け替えのない人間として誰かに承認される存在なのか。自分自身が他者から承認されているか以前に、私たちは何…

『国民と国防』 法学部1年 高野馨太

最近本屋に行ってよく思うことがあります。それは安全保障関係の書籍が非常に多く出回っていることです。おそらく、近年の日本を取り巻く安全保障上の問題が表面化してきたことを受けてだと思います。日本人の危機意識にも少しずつ変化が表れているのではな…

『震災後』 政治経済学部2年 中村雄貴

消費税関連法案が民自公の賛成で可決された。小沢グループの造反を多く出しはしたものの、過半数を大きく超える賛成を得ての可決である。これにより、消費税関連法案は衆議院を通過することになった。もちろん、消費税の増税が非常に大きい問題であることは…

『夏場を前に』 基幹理工学部2年 宮川純一

昨年夏の、とある猛暑日。大学から高田馬場駅まで歩くことがあった。早稲田から高田馬場までは、約1キロ半。炎天下においては地獄のようであった。吹き出る汗をぬぐいながら地獄の道のりを歩いていると、ふと、ひんやりとした冷気が体を包む。どこからともな…

『電子書籍は「平成の黒船」なのか?――音楽業界の革命は出版業界でも起きるか――』政治経済学部2年 伊藤宏晃

平成の黒船がやって来る――。キンドルがアメリカで爆発的に普及した時、日本の出版業界は騒然となった。電子書籍の登場はiTunesにより席巻された音楽業界を想起させ、電子書籍による出版革命を予感させた。 「アンビエント化」という言葉がある。アンビエント…

『旅情の行方』 社会科学部2年 清水健太

先月16日、二つの夜行列車がラストランを迎えた。寝台特急「日本海」(大阪―青森)と急行「きたぐに」(大阪―新潟)である。両列車はこの日を限りに定期運行から退き、以後ゴールデンウィークなどの多客期のみの臨時列車となった。理由は無論乗車率の低迷だ…

『「自由だが冷たい(何もわからない)社会」の中で』 社会科学部2年 平野真琴

昨年の12月に、脚本家・市川森一が亡くなった。大河ドラマまで手掛けた著名な脚本家であったが、個人的には『ウルトラマンエース』が印象深い。『エース』は1972年に放送が開始され、市川が初期のメインライターを務めた作品である。『エース』では男女合体…

『求道者たれ』 社会科学部2年 日下瑞貴

時が経つのは早く、私が雄弁会の門を叩いて早3年の歳月が流れようとしている。寒さ残る早稲田の杜では、芽吹く桜待ち遠しく、新たな想いを胸に新入生達が歩いている。 半期間という短い期間ではあったが、この伝統あるサークルの幹事長を務めた拙い所感と、…

『弁論大会について』 文化構想学部1年 宮田竜太郎

雄弁会のホームページをご覧になる方の多くは弁論部関係の方なのでしょうか。もしそうであるなら、この文章を見てくださる方の多くはおそらく弁論大会に一度足を運ばれたことがあると思います。弁論部関係者(身内)の多くが大会に足を運んでくれる、それ自…

『イオニアのブッダ』 政治経済学部1年 糸氏悠

世界は何から生まれ、何でできているのか。この問いが初めて生まれたのは紀元前6世紀イオニアの地であった。この時この地において初めて神々の住む世界から人々が旅立ったのである。 ほとんど時を同じくして紀元前5世紀インドで世界を探求した哲学者が生まれ…

『ジェームズ・ブキャナンと世代間格差』政治経済学部1年 中村雄貴

ジェームズ・ブキャナン(1919~)という経済学者がいます。ジェームズ・ブキャナンはアメリカの経済学者で、ケインズ批判を展開した経済学者の一人です。ブキャナンはその代表作『赤字財政の政治経済学』(1979)において、財政民主主義の政府において赤字財…

『そこに帰る場所がある』 社会科学部1年 清水健太

私は先日、故郷である愛知県長久手市で、成人式に出席した。 スーツに身を包み、逸る気持ちを抑えながら会場へと向かう。到着すると、会場の外には色鮮やかな人集りができていた。談笑する新成人たちと、会場へと移動するよう彼らに頻りに促している市の職員…

『漂流者たち』 社会科学部2年 齋藤暁

大学では学期末を迎え、学生達は試験やらレポートやらに必死になっている。 皆、正直試験なんかよりも、向かって来る長い長い春休みを心待ちにしていることだろう。 僕もそんな学生の一人なのだが、二年間という長いのか短いのか良く分からないが、それなり…

『声をかける』 基幹理工学部1年 宮川純一

2か月ほど前に、人生で初めて骨折した。その後1か月は何をするにもお金と時間と体力を沢山掛けなければならないので、骨折は個人的に大事件であった。今回は、骨折後医者に行き、その帰路を初めて松葉杖で街を歩いた時の体験について記す。そもそも骨折し…

『涙のムコウ』 社会科学部1年 平野真琴

二十年ほど前に『五稜郭』という長編歴史ドラマが放映された。榎本武揚を里見浩太郎が、土方歳三を渡哲也が、伊庭八郎を舘ひろしが演じた大作である。 僕がこれを初めて観たのは小学四年生の頃であった。一番行きたいところは何処かと問われたら「五稜郭」と…

『ラスコーリニコフは何故凶行に至ったか』政治経済学部1年 伊藤宏晃

「もしおのれの思想のために、死骸や血潮を踏み越えねばならぬような場合には、彼らは自己の内部において、良心の判断によって、血潮を踏み越える許可を自ら与えることができると思います――」(『罪と罰』/角川文庫/米川正夫訳) 『罪と罰』の主人公ラスコー…

『自明論』 政治経済学部1年 中村雄貴

電車の中には優先席というものがあります。私は最近、優先席で高齢者の方に席を譲らないで寝ているサラリーマンや若者をよく見ます。こういう光景を見て怒りを禁じえない人も多いのではないでしょうか。もちろん、一般論としては私も同意見ですし、席も高齢…

『鳥と私たち』 政治経済学部1年 藤田康宏

九月中旬に差し掛かっても残暑が引かないこの頃、私は日中自宅から片道20分で東京都吉祥寺にある井の頭恩賜公園にしばしば足を伸ばし木陰の下で時間をつぶしている。意識して運動をする必要のある大学生として毎晩夕刻にランニングをしており、暗闇と静寂…

『「十字架上の日本」と「正しさ」について』 社会科学部1年 松岡宏明

1945年8月15日正午、昭和天皇の玉音放送を持ってポツダム宣言の受諾が表明され第二次世界大戦は日本の降伏という形で終戦を迎えた。もっとも第二次世界大戦における終戦記念日をいつにするかという点については日本国内・日本国外でも諸説あるのだが現在の日…

『空間についての小考察』 社会科学部1年 清水健太

去る7月某日の午前、私は目白通りのとあるパティスリーを訪れた。一人きりの、ささやかな誕生祝いである。お店は繁盛している様子で、騒然としない程度にお客がやってきていた。ショーケースに整然と並んだガトーたちは、月並みな比喩だがさながら色とりどり…

『「千と千尋の神隠し」が教えてくれるもの 〜Good human relation 僕らの胸にも髪飾りを〜』社会科学部2年 日下瑞貴

1 初めに 以前は、スタジオジブリから「『天空の城ラピュタ』が教えてくれるもの〜anastorophe崩壊へ〜」とサンライズから「『コードギアス反逆のルルーシュ』が教えてくれるもの〜虚構の世界から、ポストモダンの動物たちへのメッセージ〜」と題したコラム…

『東京都知事選に思う』文化構想学部1年 宮田竜太郎

4月10日夜9時、私は友人と一緒に東京都知事選の選挙速報をテレビで見ていた。 選挙結果を見て、私はショックのあまり声が出なかった。 石原慎太郎氏が当選したからではない。若者の投票率があまりにも低すぎたからである。実際、投票率は20代が31%、30代が44…

『後輩として、先輩として』商学部2年 大谷麟太郎

このほど我が早稲田大学雄弁会に新入生が入会した。彼らと議論したり、弁論原稿を見せてもらったりしていると、自分も先輩になったんだなと改めて感じた。6年ほど前、アルバイトを始めた当初私は仕事の覚えが悪く数々の失敗をした。なかでもとりわけ大変だっ…

『「学び」とはなんだろう?』政治経済学部2年 徳本進之介

最近、司馬遼太郎さんの「項羽と劉邦」を読みました。そこでずっと気になっていた場面があります。劉邦の股肱の臣である張良が、ひょんなことから太公望の兵法を教授してもらう場面です。張良が秦の始皇帝を暗殺しようとし失敗し各地を亡命しているときの話…

『3.11を思う』社会科学部2年 齋藤暁

2011年3月11日14時46分 宮城県沖を震源とする東北地方太平洋沖地震が起きた。 僕の故郷はもっとも被害の大きかったと言われる宮城県気仙沼市の鹿折地区である。あの日僕は東京にいたのだが、地震が起きた瞬間、直感的に思った。 「宮城にきたかも…

『海の鳥・空の魚』ファイナンス研究科1年 稲波紀明

『神はまた言われた。 「水は魚の群れで満ち、鳥は地の上、天の大空を飛べ」。 神はこれらを見て良しとし、また祝福して言われた。 「生めよ殖えよ。魚は海の水に満ちよ、また鳥は空に殖えよ。」どんな人にも光を放つ一瞬がある。 その一瞬のためだけに、 そ…

『占守島の戰』法學部1年 石本仰

一昨年、元陸軍中尉岩荑栨氏の講演を拜聽する機會に惠まれた。氏は昭和20年8月18日、ソ聯との輭に起つた占守島の戰に參加、シベリア抑留を經て昭和22年、日本に生還した。この占守島の戰に於ける日本軍の奮戰により、北海道はソ聯の領有を免れたといはれる。…