『後輩として、先輩として』商学部2年 大谷麟太郎

このほど我が早稲田大学雄弁会に新入生が入会した。彼らと議論したり、弁論原稿を見せてもらったりしていると、自分も先輩になったんだなと改めて感じた。

6年ほど前、アルバイトを始めた当初私は仕事の覚えが悪く数々の失敗をした。なかでもとりわけ大変だったのは、キッチンでの調理が間に合わず商品切れを起こし、お客様は長蛇の列、レジや袋詰めの作業は混乱、という状況を引き起こしてしまったことである。
その時ある先輩が、業務の過酷さとプレッシャーとで泣きそうになっていた私を、文句も言わず笑って助けてくれた。閉店後、私はあまりの情けなさに、「先輩、今度何かお礼をさせてください」と申し出た。ところが先輩は「それは後輩に返してあげて。自分も先輩から助けてもらった恩を返しただけだから。」とおっしゃった。

それ以来、私は後輩へと接するときはその言葉を常に意識している。

責任者として仕事をさせていただいたこともありトラブルには頻繁に見舞われた。中には後輩の過失によるものも多々あった。そうしたとき、私はもちろん必要な指導を行い反省は促すものの、努めて笑って手助けすることにしていた。というより、意識しなくてもかつての先輩とのやり取りを思い出し自然と微笑んでしまっていた。そして私に謝る後輩に、いつも言葉をかける。「それは後輩に返してあげて」と。

雄弁会において私は先輩方の厳しくも温かいご指導の下、1年間活動することができた。だから後輩達には先輩への恩返しのつもりで、誠心誠意ぶつかっていこうと考えている。後輩がもし、私と議論をして何かを得、それが自分にとってプラスになったと考えてくれたなら、同じことを今度は自分が先輩になった時、そのまた後輩に返してあげてほしい。そういった、いってみればバトンの受け渡しを見届けることができた時、私は先輩へ恩返しできたことになるのだと思う。

現役会員として活動をしている間も、その後の人生においても、自分にバトンをくれた先輩方に負けないよう、自分のバトンを受け取ってくれた後輩達に模範を示せるよう、精進してゆく所存である。