『国民と国防』 法学部1年 高野馨太

最近本屋に行ってよく思うことがあります。それは安全保障関係の書籍が非常に多く出回っていることです。おそらく、近年の日本を取り巻く安全保障上の問題が表面化してきたことを受けてだと思います。日本人の危機意識にも少しずつ変化が表れているのではないでしょうか。先の、中国漁船が海上保安庁の巡視艇に体当たりし、またその動画がネット上に上げられたときには大変な物議を醸しました。さらに最近は、石原都知事が主導する東京都あるいは国による尖閣諸島購入の計画が大きな話題になっています。そういった事件が多々起こっている中、日本人の国防に対する意識も変わってきているのではないかと思います。
日本人は昔から平和ボケした国民と言われてきました。それは戦後長らく戦争ないし紛争に巻き込まれることなく国家の繁栄と安定を保ってきた証左でもあります。ですが、我が国の国防を担うのは最終的には我が国の国民です。国民が危機意識を持つようになってきたのは、だんだんと日本を取り巻く国際情勢が緊迫してきたことに第一の理由があり、それは決して喜ばしいことではありません。ですが、国民が国防に理解を示し、関心を持ってくれるのは大変よいことだと思います。なぜなら、国民の理解と協力が得られた国防の仕組みが「抑止力」の充実につながるからです。「抑止力」とは、他国に我が国を侵略させない、あるいはその意図を持たせない力のことです。国民の協力と理解があってはじめて、国防に必要な装備を整え、かつその活動を応援し、また国防に資する政策を打つことができるのです。我が国の平和と安定が保たれているのも、自衛隊はじめ関係各所の不断の努力によって「抑止力」が維持されているからです。
話が少々それてしまいますが、私は「予備自衛官補」に志願し、運よく合格・採用の運びとなりました。これは民間人を対象として、「予備自衛官」を養成するコースです。予備自衛官とは、普段はそれぞれの仕事に従事しているが、有事の際には召集命令を受けて任務にかけつける人員のことです。この予備自衛官補制度の最大の意義は、実際に有事の際に活躍する人員を民間から広く確保することもそうですが、むしろ民間に自衛隊のことをよく知った者を増やすことに在ります。このような活動によって国民へ国防の理解を促し、それが「抑止力」につながっていくのだ、と自衛隊の幹部の方から教えられました。そして私はその抑止力の一翼を担っているということになります。
夏から私は予備自衛官補の訓練が始まりますが、厳しい訓練の中で感じることも多いと思います。訓練では精一杯努力し、併せて日本の国防について考えていく所存です。