「Be a creative challenger」 教育学部三年 山口宇彦

 先日アメリカから宇宙産業に関するビッグニュースが飛んできた。実業家イーロン・マスク率いる民間宇宙開発企業スペースX社が、一度発射させたロケットを洋上に着陸させることに成功したのである。4回の失敗の末の成功で、これにより宇宙開発はさらに低コスト化が進むが、イーロン・マスクはまだまだ先を見据えている。次なる目標は火星探査、そして将来的に人類の火星への移住を目指すそうだ。
 この実験を成功させたスペースX社を率いるイーロン・マスクという男、実はこれ以外にもいくつもの大事業を動かしている。世界で最も高性能な電気自動車を開発・販売しているテスラ・モーターズ社、全米に太陽光発電を普及させるソーラー・シティ社を率いるほか、サンフランシスコとロサンゼルスを30分で結ぶ超高速鉄道ハイパーループ構想も主導している。政治家でも官僚でもない、一民間人(もちろん社長という立場ではあるが)が社会を大きく動かしているのである。そして彼のような人はアメリカ、特にシリコンバレーに集まり、次々とフロンティアを開拓し瞬く間に世界を変えているのである。一民間人が次々とアイデアと技能と実行力で社会を変えるという時代が到来したのである。
 世界を変えるような事業が次々と起こるアメリカから、今度は日本に目を移してみよう。近年、日本社会はかつての右肩上がりの成長が終わりをつげ、様々な課題に直面している。特に少子高齢化に伴い、国際競争力が低下し、税収が減る中でいかに財政のバランスを保つのかは重要な問題である。政府はこの解決のために増税だけでなく、今後の経済成長につながるような新産業の創出にも不十分ながら力を入れている。かつての日本であれば、このような状況でも経済成長はできただろう。しかしこれからはどうだろうか。ますます財政的なリソースが限られていく中で、政府の支援に頼っていて果たして日本全体は豊かになるだろうか。答えは残念ながら否であろう。
 これからの時代、重要なのは国家がどうするかではない。個人がどう考え行動するかなのである。個人が何らかの潮流に身を委ねて生きていける時代は終わりをつげ、一人一人が主体的に考え、行動し、目の前の問題を解決しなければならないのである。そしてそのような時代に欠かせなくなるのはおそらく前述したイーロン・マスクのような人物であろう。アメリカのように起業マインドがそれほど強くない日本でも、いずれ一民間人が社会をダイナミックに変えていくような時代は確実に訪れるであろうし、訪れなければ日本に未来はないだろう。個人の自立・自律こそが今後の日本に欠かせないのである。そのためには政治はもちろん、経済や教育、社会保障、テクノロジーまでその仕様を変えていく必要がある。現在のシステムを大胆にアップグレードしなければならないのである。そのために必要なのは決断である。政府から個人に至るまで主体的に決断し、自ら未来を切り開かなければならないのである。重要な決断を先送りする政府(そしてその政府を選んでいるのは私たち有権者である)のままでは全くもってこれからの社会に対応できないのである。まして頑張る人の足を引っ張って悦に浸っているような人はこれからの時代は救いようがないのである。一人一人全力で一生を過ごさなければいけない時代である。それは生き抜くのは大変な時代であるが、同時に実に面白い時代でもある。一個人が社会をよりよく変えることのできる可能性を秘めているのだから。この荒波を乗りこなすか、おぼれるかは良くも悪くも個人次第なのである。
 コラムのタイトルは私の母校、北海道登別明日(あけび)中等教育学校の卒業式で当時の校長が英語でスピーチをした際、私たちに送ってくれた言葉である。「創造的な挑戦者たれ」という言葉は今でも私の行動指針になっている。この「創造的な挑戦者」こそ、これからの時代を楽しんで生きることのできる、アイデア・技能・実行力を用いて社会を変える一個人なのである。私は大学に入って、授業、サークル、インターン、寮などで一人一人違う志を持ちそれに向けて全力投球する人と出会うことが出来た。そしてあと2年で、社会に出て戦うこととなる。この2年での経験を糧に自らの実力をもっと磨いて、「創造的な挑戦者」を体現できる人間となる所存である。