新元号  國谷 涼太(社会科学部2年)

4月1日午前11時30分、大学では様々なサークルが新入生を迎える中、私は首相官邸YouTube生放送を見ていた。新元号発表という歴史的な瞬間を目撃するために。2016年8月8日に「象徴についてのお務めについての天皇陛下のおことば」が表明されて以来、様々な準備が行われ、新しい時代が来るという実感が徐々に湧いてきたが、平成も残り1ヶ月となり、いよいよ新元号が発表されるこの日は、今までで最も新しい時代を感じさせる一日となるかもしれない。朝から多くの情報番組で新元号発表までのカウントダウンが行われる中、そんな思いで家を出た。平成生まれの私にとっては初めての改元で、大学へ向かう電車の中でも頭の中は新元号のことで頭がいっぱいだ。少し時間があったため、二重橋前駅で下車し、一つ隣の大手町まで皇居周辺を歩いた。今回の改元は御崩御という悲しみの中ではなく、天皇陛下から皇太子殿下への御譲位という新しい時代への期待感の中で行われる。だからこそ、新元号について様々に思いを致すことができるのだ。

時間となり、菅義偉官房長官の記者会見が始まった。今回も平成の発表方法を踏襲することとなっていた。ちなみに、平成への改元の際に「平成」と書かれた墨書を掲げ、後に「平成おじさん」と呼ばれた当時の官房長官小渕恵三元総理と、当時の総理大臣・竹下登元総理は我が雄弁会の大先輩である。そんな雄弁会の一員として、今回の改元を迎えられたことも、感慨深いものがある。いよいよ新元号が発表され、菅官房長官が掲げた墨書には「令和」(れいわ)と書かれていた。この歴史的な瞬間に立ち会えたことに鳥肌が立った。官房長官の会見が終了し、安倍晋三総理から談話が発表された。「令和」には、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味が込められているということだ。

「平成」には「内平かに外成る、地平かに天成る」(国内外、天地ともに平和が達成される)という意味が込められていたが、平成は幸いにもその30年で初めて戦争のない時代ではあったものの、災害の多い時代となってしまった。しかし、災害が発生するたびに天皇皇后両陛下はじめ御皇室が常に被災者に寄り添ってこられ、多くの人に勇気を与えた。こうした姿勢は令和においても続いていくだろう。

今回発表された令和は最初の「大化」から数えて248番目の元号である。今回は初めて日本の古典が出典とされた。今や元号を使用する国は日本だけとなった。それぞれの元号に先人たちの願いが込められていた。雄弁会では「令和」と書かれたビラを発行し、多くの人に受け取っていただいた。今日は日本人の中に根ざした元号という文化を感じる一日になった。この伝統をなんとしても守っていきたい。

5月1日、令和が始まる。明日から世間は令和一色になるかもしれないが、もうしばらくは平成だ。天皇陛下は最後の最後まで全身全霊で象徴としてのお務めを果たしておられる。平成の名残惜しさと令和への期待が交差し、どういう気持ちで新たな時代を迎えることになるのかまだ分からないが、私も残り1ヶ月、平成という時代を生きることができた誇りを胸に、全力で平成を生きよう。