『震災後』 政治経済学部2年 中村雄貴

消費税関連法案が民自公の賛成で可決された。小沢グループの造反を多く出しはしたものの、過半数を大きく超える賛成を得ての可決である。これにより、消費税関連法案は衆議院を通過することになった。もちろん、消費税の増税が非常に大きい問題であることは私も共有するところであるが、ここで注目したいのはむしろ民自公の賛成、というところにである。漸く大きな国家的問題について与野党が一致して部分的にであれ同意が取り付けられる例ができたということは、非常に大きな出来事であると思う。
1年ほど前を思い起こして欲しい。大震災の影響を受けて一時的に大連立を容認する空気が広まった。震災のために皆が一致団結して改革を推し進めようとしたのだ。私も、あのときは復興を推し進めるために改革が必要だと考えていた。識者の中でも大連立による改革を支持する声が大きかったように思う。しかし、あの時の大連立の動きは極めて中途半端に留まった。
このことで私が思うのは、たとえどんなに大きい出来事であろうと、社会的に存在する「流れ」はなかなか変えられないし、我々がその中でできるのは漸進的に少しずつ社会進歩を促す手助けをする程度だということだ。もしこうした歴史的流れを踏まえたものでなければ、フランス革命の独裁政治がそうであったように、社会的に大変な惨劇を引き起こしてしまうとも考えられないだろうか。今回の一件で社会的な流れの大きさを、非常に思い知らされた。
結局、消費税増税という日本の非常に大きな問題を解決したのは、政治家の危機感の漸進的高まりと、菅政権〜野田政権の地道な与野党協議の結果であった。我々も社会に出るにあたって、こうした個人の力の小ささを噛み締めつつ、勉学を続けたい。
最後に、マルクスの言葉を添えて、このコラムの締めとする。
「人間は自分自身の歴史を作る。だが、思う儘にではない。自分で選んだ環境のもとではなくて、直ぐ目の前にある、与えられた、持ち越されてきた環境のもとで作るのである。死せるすべての世代の伝統が悪魔のように生けるものの頭脳を抑えつけている」(マルクス『ルイ・ポナパルトのブリュメール18日』)。