『東京都知事選に思う』文化構想学部1年 宮田竜太郎

4月10日夜9時、私は友人と一緒に東京都知事選の選挙速報をテレビで見ていた。
選挙結果を見て、私はショックのあまり声が出なかった。
石原慎太郎氏が当選したからではない。若者の投票率があまりにも低すぎたからである。

実際、投票率は20代が31%、30代が44%、40代が63%、50代が61%、60代が82%、70代以上が74%と、20代の投票率は最も投票率の高い60代の投票率の約4割程度でしかなかったのである。

投票に行かなかった若者が仮に投票に行っていたら、選挙の結果は大きく変わっていた可能性もある。下のグラフを見ると、若者層特に20代の投票先割合は石原氏以外の方が多い。



http://s3.amazonaws.com/twitpic/photos/full/274183880.png?AWSAccessKeyId=AKIAJF3XCCKACR3QDMOA&Expires=1309441100&Signature=R4Ui1CNhltBl%2FOgxQGQclsFXvN4%3Dより)

世代別投票率や上のグラフを見て、石原氏(仮に再選を考えているとして)やその他の政治家は、どう行動するであろうか。おそらく、大票田となる高齢者向けの政策提言やパフォーマンスを行うであろう。なぜなら、政治家は票を集めなければ当選できないからである。同じ票を集めるのであれば、投票率の高い高齢者の方を向いた方が合理的ではなかろうか。

この状況を、シルバーデモクラシー(日本語に直すと高齢者主権民主主義とでも言えようか)という。ただでさえ少子高齢化によって、高齢者人口が増えているのにも関わらず、それに加え、若者の投票率が低く、高齢者の投票率が高い結果、実際の投票者数が高齢者に大きく偏るのである。
その結果、政治家が高齢者層の大票田を目当てに、高齢者に有利な政策を提言する、もしくは高齢者に不利となる政策提言をしなくなるのである。
このことは、様々な弊害を生む。
私の研究している年金制度に関して言えば、年金財政の危機が叫ばれるなか、現役層にとって不利となる年金保険料額の増額は行われても、高齢者層にとって不利となる年金給付額の削減は、なかなか行われないのである。
実際、年金財政の危機を防ぐために行われた「2004年年金改革」以後、年金給付額の削減は一度も行われていないのが現状なのである。

それでは、シルバーデモクラシーから脱却するにはどうしたらいいのであろうか。
1つは、少子高齢化を解決するという方向性がある。しかし、それには長い時間を要する上、世代別投票率が現状のままでは、大きな変化は期待できないであろう。
実際、東京都の世代別人口を見ると、20代が約170万人、30代が約220万人、40代が約170万人、50代が約160万人、60代が約150万人、70代以上が約170万人と現状は20代、30代と60代、70代以上の人口は拮抗しているのである。

しかし、投票者数でみると、この数は大きく変わり、20代が約54万人、30代が約100万人、40代が約110万人、50代が約96万人、60代が約126万人、70代以上が約126万人と大きく偏ることになるのである。
先ほど比較した、20代、30代と60代、70代以上において投票者数を比べると、20代、30代が約154万人、 60代、70代以上 が約252万人と、20代、30代は60代、70代以上 の6割程度になってしまうのである。
したがって、解決の方向性として2つ目の、若者層の投票率を上げることこそが重要なのである。

最後に、序盤で述べた、若者の多くが投票に行った場合に、選挙の結果がどうなっていたかということを想定したい。
ここでは、全世代の投票率が100%(投票先割合は同じとする)で、反石原票の票を取り合うことになった東国原氏と渡邊氏が統一候補(仮にA氏とする)を立てた場合を具体的に想定してみる。

その場合、石原氏への投票数が444万、A氏への投票数が483万と、結果が全く変わることになるのである。
何度も言うが、私は石原氏に当選して欲しくないわけではない。
投票に行かなかった若者が投票に行き、その大多数が石原氏に投票して、選挙結果自体が変わらなくても、それでいいと考える。
その場合でも、石原氏やその他の政治家は若者層を無視することができなくなるのである。シルバーデモクラシーから脱却できるのである!!