「Die Macht der Kunst」 文学部二年 大久保宅郎

我国には、能弁家や達弁家は多いが真の雄弁家は殆ど見あたらない。我々は事実の説明家や思想の叙述者を以て満足してはならない。宜しく輿論を喚起し、一世も動かすような雄弁家を作らねばない。早稲田大学雄弁会は、小野梓のこの言葉とともに発足した。 以降…

「多極化の世界で」 政治経済学部二年 眞嶋明生

最近の国際情勢に不安を感じる人々は多いのではないだろうか。確かに様々な問題が山積している。東アジアという地域で語るならば強い拡大志向を抱き、国際法を軽視する中国に対する不信感、韓国との歴史問題の肥大化やその摩擦、新指導者のもと権力闘争が行…

「悼み」 法学部二年 吉原優

去年の9月、私は“2人の家族”を喪った。 最初は、祖父だった。 長年、彼は癌を患っていた。 「もう長くないだろう」 そう、祖父と暮らす叔母から連絡が来たのは、夏の始まりの話だ。実家があまり好きではない母が、その時ようやく重い腰を上げ、実家に頻繁に…

「……そして少年は大人になる」政治経済学部二年 伊藤直哉

雄弁会の門をたたいてから早くも2年もの歳月が経過しようとしている。これから雄弁会に入会しようとする新入生にあっては、不肖ながら私のコラムが一助となれば幸いである。 ここでは私の入会の経緯について記述したいと思う。 2年前の4月、友人の紹介により…

「超克、その向こう側へ」政治経済学部二年 井守健太朗

早稲田は春を迎えた。早稲田キャンパスの南門前の桜は毎年、こぢんまりと咲く。しかし、普段私が見慣れた大隈講堂を背景にした早稲田の風景に桜は花色を添え、豪勢な春色を醸し出す。実に心躍る季節である。新歓期も始まった。私のある同期は新歓期を「祭」…

「甘い罠」教育学部一年 二ノ宮裕大

「奨学金を借りることができなければ、大学に通うことなんてできなかった。」「奨学金はまさに希望だった。」 このように考える人々は決して少ないわけではないだろう。不肖ながら私自身も奨学金を借りて現在大学に通わせて頂いている。しかし、このまさに「…

「読むということ」文学部一年 大久保宅郎

あなたは日頃から本を読んでいるだろうか?「はい」と答えられたあなた。では、あなたにとって読書とはいったいなんだろうか? 「読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。」 ショーペン…

「酒場の効用――新宿ゴールデン街に遊んでみて――」法学部二年 高野馨太

私はよく新宿ゴールデン街(以下、ゴールデン街)に繰り出しています。ここは「おとな」な街なのでしょう。私は某「おとな」な方に連れて行ってもらってからは、「ふらり」と一人で、あるいは友人と連れ立って、私たちは若僧なものですから、隅っこの方でちび…

「生きづらい日が来る前に」政治経済学部二年 小林圭

2013年の10大ニュースを並べてみれば、オリンピック招致、アベノミクスによる経済成長、富士山の世界遺産への登録、アルジェリアでの日揮社員の人質事件、TPPへの参加表明、参議院でのねじれ解消、民法900条の違憲判決、消費税の8%への増税決定、徳洲会の…

「就労と私たち」文学部二年 新谷嘉徳

今回のコラムにおいては今まで私が重視してきた就労について言及する。 就労とは誰もが否応無く関わらなければならないことである。それは人間が社会と関わらざるを得ない状況に置かれているからこそであり就労とは社会と関わっていく手段である。社会と関わ…

「相手の視点からみること」政治経済学部一年 眞嶋明生

私は毎朝の日課としてNHKのBS番組「おはよう世界」を観ていた。この番組は世界の報道機関のニュースを翻訳して流すものである。残念ながら現在のアパートには機材が無い為視聴が出来ない。去年の9月のことである。「おはよう世界」の中で流れた韓国テレビ局K…

「その一と時」社会科学部三年 平野真琴

鞄を開けたら、一冊目の読書ノートが背表紙を境に真っ二つになっていた。大学入学以来携帯し使い古していたもの故やむを得ないのであるが、これほど悲しいことはない。自分の過去が引き裂かれたような気持ちになった。更に困ったことには、背表紙の拘束を離…

「地球がもしも、今とは逆に回転していたら」法学部一年 吉原優

「『LOVE』と『LIKE』はどう違うのか」 落ち着いた男性ナレーターの声が、不意に私の注意を誘った。ふと振り返ってテレビの画面を見てみれば、白地の画面に、黒く細かい文字がびっしりと整列しているところだった。朝日新聞社の、テレビCMである。 ふと、記…

「非正規雇用者の『受け皿』」教育学部一年 二ノ宮裕大

総務省が12日に発表した就業構造基本調査によると、非正規労働者の総数が約2043万人と、過去最高を更新。過去20年間では16.5%増加し、雇用環境の厳しさがあらためて示された。 また、過去5年間に正規労働者から非正規に移った割合は40.3%…

「基地と沖縄」文化構想学部一年 桑江リリー

沖縄の基地問題が全国的に有名になったのは2009年、当時の鳩山政権が普天間基地移設問題解決に着手したことが大きな要因では無いだろうか。それ以来、沖縄の米軍基地と言えば普天間という印象が強くなったが、実際には極東最大の米軍基地と呼ばれる嘉手納飛…

「『憲法』考」政治経済学部二年 小林圭

96条を筆頭に日本国憲法改正についての話題が世間を賑せている。先日も早稲田大学構内で憲法改正に反対するという旨のビラが配られていた。 憲法といえば主演のダニエル・デイ=ルイスがアカデミー賞主演男優賞を獲得したスピルバーグ監督作品『リンカーン』…

「私の失恋記」法学部二年 高野馨太

私はかつて防衛大学校を志望しておりました。端的に言って軍務に憧れたのでありました。受験期は今後予想される「腕立て伏せ用意!」や「駆け足、進め!」といった号令に備えて、毎日あらゆるトレーニングを行っておりました。八王子の実家近くにある高尾山…

「我々が、今こそ」政治経済学部二年 井守健太朗

政治とインターネットの結びつきが強まりつつある。私が昨年、早稲田大学雄弁会ホームページ内コラム「SNSにおける言説」内で述べたのはあくまでSNS内における政治的活動の広がりであった。例えば、twitterやmixiが挙げられる。こういった人々が言説を瞬間的…

「 『優しさ』という悪魔 」文学部二年 新谷嘉徳

前回のコラムでは、「私って何者」というタイトルで他者を通して自身の存在意義を確認するという内容を取り扱ったのだが、今回のコラムでは現代の若者の人間関係と息苦しさや生きづらさとの関係について考えることにする。 突然だが友達とはなんであろうか。…

「 友達 」政治経済学部二年 伊藤直哉

最近、友達を表す単語がいくつも存在することを知った。仮に、高校時代にその単語を思い浮かべたとしたら、せいぜい親友や学友くらいしか思い浮かばなかったであろう。大学に入学すると、よっ友なる単語を知った。それは、すれ違ったときに「よっ!」と挨拶…

「かなしく思うことなんて本当に何一つないよ」社会科学部二年 平野真琴

2011年の3月11日は卒業を一週間前に控えた高校にいた。場所は東京。あの時の周章狼狽ぶりは共にいた人間であればいつでも思い出されよう。堀井憲一郎は『いつだって大変な時代』で「全貌がわかるにつれて、かつてない大きな地震だったという“あと情報”によっ…

「欺瞞に震える声」基幹理工学部二年 宮川純一 

自己欺瞞……自分をあざむき、うぬぼれること。我々は言説とりわけ当為を述べたり価値観を発露したり思いを乗せた発言をする。しかしそれは常に欺瞞に満ちている。あらゆる立場を把握しえないことや時を経て考えが変化することは当然としても、本人の過去・現…

「我々の思いあがりについて」政治経済学部二年 中村雄貴

理論は現実から生じています。たとえそれが帰納法だろうと演繹法だろうと、その源泉は脳の中にはありません。現実にあります。であるならば、理論には自ずと限界が生じます。なぜなら、我々が理論の源泉としている現実の中で私が依拠している現実の量という…

「旅」法学部一年 高野馨太

私はよく旅に行きます。家族旅行は昔から、一人旅をし始めたのは高校一年生の頃からでした。それから、しばしば暇を見つけてはバックパックを背負って国内を回っております。私は旅行をしているというよりも旅をしていると言いたい。むしろ「今回はそういう…

「自由」政治経済学部一年 井守健太朗

先日、G・オーウェル著『1984年』を読んだ。この作品は1949年に執筆されたもので、反共産主義の立場の人々から熱狂的な支持をとりつけ、当時の冷戦下の欧米諸国のバイブルになったとも言われている作品である。60年経った現在でもなお世界中の人々に読まれて…

『死刑制度と刑務所のあり方を考える』政治経済学部一年 小林圭

刑務所は何のためにあるのか。受刑者を社会から隔離する懲罰のための組織なのか。それとも受刑者を再教育するための組織なのか。この問題は死刑制度にも当てはまる。死刑を執行するのは懲罰として行うのか。それとも矯正教育を行うことが不可能であるから、…

『私って何者』文学部一年 新谷嘉徳

「私って何者。他人って私とどう違うの。そもそも人間って何。」このように考えたことのある者は少なくないと思う。私も例外ではなくその問いと長い間付き合っていた。私がその疑問を抱くようになったのは小学生からだと認識している。小学生時代から考える…

『地震のあとに』政治経済学部一年 伊藤直哉

昨年の3月11日、日本は未曾有の大地震を経験した。既に1年半の年月が流れた。当時の記憶が薄れてきている人もいるかもしれない。しかし、私には未だに当時の記憶が鮮明に残っている。なぜなら、比較的身近に放射線の影響が目に見えて存在しているからだ。私…

『生活感(生活における実感)』法学部一年 高野馨太

この国を守る。その深切な心意気は何をもって生まれるのか。おそらく、己の生活を守らんとするその心情にあると私には思われます。たとえば可憐な妻を迎えて子を作り、家庭を持った。この生活を守らねばならぬ。そう決意したある人は、己が祖国、己が生活を…

『呼び名』 社会科学部二年 清水健太

私は今年の8月に一人で山陰を旅しました。その際鳥取は米子のとあるビジネスホテルに宿を取りました。ビジネスホテルといっても、年季の入った二階建ての建物で、かなりお年を召した経営者のおっちゃんがテレビを見ながらフロントに腰かけている、どこか温か…