「甘い罠」教育学部一年 二ノ宮裕大

奨学金を借りることができなければ、大学に通うことなんてできなかった。」「奨学金はまさに希望だった。」
このように考える人々は決して少ないわけではないだろう。不肖ながら私自身も奨学金を借りて現在大学に通わせて頂いている。

しかし、このまさに「希望」であった奨学金が人々を「絶望」に叩き落とす可能性を秘めているという現実について理解している人々はどれだけいるのだろうか。
 「奨学金は各種ローンと比較すると、借りるための要件が非常に緩いため、利用しやすい。」「ローンに対する抵抗感はあるが奨学金なら利用したい。」「現在では所得連動返還型制度が導入されたので、もし返済が履行できない経済状況に陥っても安心である」等と考える人々もいるだろう。

 だが、このような認識をすることは、奨学金の「甘い罠」にかかるという事態に陥ることに繋がる。

現在、核家族化の進行により、親族による人的保障が難しい現状にある。そこで、奨学金を借りる際、親族による保障の代わりに財団法人等が保障するといった機関保障制度が導入された。これによって、学生本人の意思と、親の了承の一筆のみで数百万円にものぼる借金が可能となった。これにより、奨学金に潜む「罠」に気付き難くい状況に陥り易い。
奨学金は返済が義務付けられている物であり、他の各種ローン等いわゆる借金をすることと実質的には同じ物であるといえる。なぜなら、返済を怠れば督促状が届く上に、法的措置によって強制的に回収され、極め付けはブラックリストに載せられるという事態にまで陥るからである。ブラックリストに載るということは、クレジットカードが作れない、ローンが組めないといった、人的保障が必要となる部分で大いに損害を受けることになる。以上の様なことから、ブラックリストに載るということは非常に大きなリスクとなるのである。しかし、このことを認識せずに借りるということは「罠」にかかるようなものだといえよう。
また、返済能力がない人々に対して、年収300万円を超えるまでは返済が猶予される所得連動返還型制度度が近年導入された。しかし、これの対象となるのは第一種奨学金(奨学金利用者の約3割程度)のみであって、大半の利用者が受給する第二種奨学金においてはこの制度は導入されていない。このこともあって、奨学金は現在安心して利用しやすいものであると謳われているが、実際としては「罠」に他ならないと考える。

以上のことから奨学金の安易な利用は慎むべきであるし、また、奨学金制度自体も表向きとして謳われる利用のし易さだけではなく、返済できなかった場合のリスクというものも徹底して周知させる必要があると考える。それだけではなく、返済能力がない人々に対し、現行の猶予5年だけではなく所得連動返還型制度かそれに準じる形での救済措置がとられるべきである。そもそも、進学という「希望」を与えるためにあるものが奨学金であるならば、人々を「絶望」させる制度であってはならないのである。