第五弾:纏めコラム

法学部2年 杉田壮


今回私は自己確認型犯罪、非行、また引きこもり等に見られる現代社会の病理を問題視し、コンテンツを進めてまいりました。

自己確認型犯罪が生じてしまう原因として、日本におけるコミュニティの展開、都市化に伴う人々の生活の変化を背景に、伝統的社会が解体されることによって崩壊した共同性を、地域において再構築していったという過程を挙げ、その中で安心型コミュニティから信頼型コミュニティへ変化したことからコミュニケーションの質の変化を述べました。そしてこうした変化に対応できない人々が80年代以降、自己確認型犯罪や非行として注目され、問題視され始めたのですが、この問題の原因として他者交流の場、きっかけがないことを述べてまいりました。そこで個人の選択の自由(物理的な場や空間を越えて、主体的な個人として社会に関わっていく道が拡大したこと)を重視し、そのような中で様々な価値観の下、安定した自己を形成できる他者交流の場を目指して政策提言して参りました。

こうした方向性の下、学校におけるボランティア教育が個人個人の新たな交流の機会を持たせる制度として導入されていることを述べ、こうしたボランティア活動の可能性を調べていくと、ボランティアに対する意識は青少年においても総じて高いのに、実際の参加率は低いというギャップがありました。そして青少年の自発的な社会活動を促すためにも学校の先生がコーディネーターとなり様々なNPO・ボランティア組織と協働して学校や家庭だけでない新たな他者交流の場、きっかけが作られているという発見がありました。

コンテンツを掲載していった間にも会員との議論やこのコンテンツをご覧になって頂いた方々からのご指摘は、今後の方向性を述べるに際しても、新たな観点として、私自身の考えに大きな影響を与えるものでしたので、ここではそれについて述べさせて頂きます。

まず、私が個々人の自発的・積極的な他者交流の場をNPOやボランティアでしか捉えてなかったことに気づきました。私は自己確認型犯罪等が生じてしまう時期として青少年期(13歳〜19歳)を挙げ、時期的にその段階(すなわち学校生活を営む段階)での解決策を述べましたが、現在では自我の形成に悩む年齢層が30代前後まで拡大しているということから、また自我の形成に悩むというのは、それはつまり青年期に「自己の発見」(個々人が将来の方向性を決める)が多種多様な形で起こり、それと同時に現実社会に自らを押し込まねばならないという悩みが生じるということであって、自己確認型犯罪、非行が生じてしまうのも社会活動に加わっていかなければならないプレッシャーから逸脱するという意味で起こるという背景が存在しました。私が問題だとしていたのも学校での孤立という一部の側面であって、それだけではない大局的な視点から労働、具体的には雇用の面から青少年が社会参加を果たすに当たっての問題を考察することが必要であるという結果に至りました。
もちろん自らが生れ落ちた共同体の中での人間関係というのは個人が生活するうえで心の拠り所や支えとなるものではありますが、しかし私は個人としての意思を反映し、個々人の自由な選択の下、自発的、積極的な社会活動が営まれるべきであると考えるので今後はNPO・ボランティアといった社会活動だけでない現実的な側面から青少年の悩みや不満が生じてしまう原因やその解決策を探って参りたいと思います。

これまで議論していただいた会員方、このコンテンツを見ていただいた方にお礼申し上げます。





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