第五弾:まとめコラム


政治経済学部二年 佐々木哲平


ここまで、第四弾にわたるコンテンツによって問題提起から現状分析・政策の方向性まで提示してきた。ここではまとめとして、コンテンツの要点を取り上げた上で、所感を述べたい。

私がこのコンテンツで終始述べてきたことは地域社会の崩壊に対する危機感であった。地域社会はこれまでも人間関係を担保し、そこで共有するべき価値を継承し、時にはそれを受け継いで創造する場であった。それが、私の提起したニヒリズムアノミーといった問題の解決には必要不可欠なのである。現在よく言われるような主体的な個人、自由といったものは果たして無前提的に受け入れるべきものなのであろうか。その結果生み出されたものが価値観の多様化という名の価値観の喪失であり、社会の無規範化だったのではなかろうか。

現代日本は訴訟国家化している。共通善なるものが希薄化した結果、断片化された個人は利己主義と情緒主義という形で顕在化したのである。このような事態に対して防犯カメラを設置する、弁護士や裁判官を養成する、裁判の手続きを簡素化して裁判所を身近なものにする、といった対策を最優先にするべきなのであろうか。それらはすべて事後的な対策であるし、根本的な解決には結びつかない。しかもそれでは空虚な自己という問題はなんら解決しえないのである。

第一次的な絆である地域共同体はそれらの問題を解決しうる力を持っているし、実際に共同体の崩壊が叫ばれるまでこのような問題は発生しなかった。そのための政策指針が第四弾で述べたものである。NPO支援など都市部においては「市民社会」の新たな担い手を育成しようという運動や政策は盛んに行われている。だが、皆が皆、主体的にかかわっていくことができるのかといえば疑問があるし、共通善の保持がもっとも必要であるからには、まだ残存している共同体の護持がかかせない。それを現代の時代潮流といかに適合させていくかが最も重要な点であろう。

最後になりましたが、本コンテンツを読んでいただいた方に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。ばらばらの個人ではなく、みんなが共にいると思える社会、そこで日常生活の意味を見出せる社会を目指して生きたいと思います。