「現代のガリバー旅行記・ONE PIECE」社会科学部1年 大嶽 潤平

私は、先日先輩から週刊少年ジャンプの人気連載漫画であるワンピースを1巻から55巻まで全て借りた。主人公ルフィの登場からページを捲る手が止まらなくなり1週間の内に読み終えてしまった。私は小学校3年生のころからの(つまりワンピース連載前からの)ジャンプ読者であったのだが、高校1年生のころ、学業と部活に専念するために大好きなジャンプを封印したのだった。
3年間のブランクを経て、僕のワンピースに対する印象は大きく変わった。
ページを読み進めていく内に、「こ、この漫画は深い!これは現代のガリバー旅行記ではないか!!」と勝手に思い始めたのだ。
ここでガリバー旅行記の説明をしようと思う。
ガリバー旅行記は英国の風刺作家スウィフトによって執筆された小説である。この小説の概要は、船医のガリバーが船に乗って航海をしている内に小人の国や巨人の国それに馬の国に流れ着き、そこで生活を送るというものである。特に有名なのは検索エンジンのYahooの由来となったヤフーが出てくる「フウイヌム国(馬の国)」である。ざっと説明してみよう。
フウイヌム国にたどりついたガリバーは“嘘”や“偽”“裏切り”という言葉が存在せずフウイヌムの住人(馬)にその言葉の定義を説明することすら難しいことに衝撃を受ける。嘘偽りのなく高貴で清廉潔白なフウイヌムの住人と接していくうちにガリバーは段々と自分もフウイヌムでありたいと願うようになり、自分の母国に無事帰還した後も厩に馬を飼いそれをこよなく愛した。
この物語の背景には当時の“嘘”“偽”“裏切り”のイギリス政治への批判がある。

そしてワンピースにも共通項を私は見出した。
このコラムのほとんどの読者が読んだことがあると思うが一応大雑把に説明しておく。
ゴムゴムの実をためてしまった主人公ルフィは体が自由に伸び縮みするゴム人間となってしまう。海賊王を目指すルフィは仲間を増やしながら旅を続けるというものだ。
私がガリバー旅行記と共通点を感じた所は、例えばアーロン(ルフィの仲間であるナミの故郷の村で、海軍にわいろを贈り独裁者になり村を破壊し続ける魚人族)は「下等な人間どもめが俺に逆らうのは100年早いんだよ…」というような言葉を吐いたところである。私はこのシーンを読みながら(これは万物の霊長と呼ばれる人間に対しての皮肉なのか…)と感じたし、例えばクロコダイル(政府に認められているが、その立場を利用して国中をだまし、アラバスタ王国を乗っ取り自分だけが英雄になろうと考えている海賊)が「この国を守ろう、この国の誇りを取り戻すんだという気持ちが新たな争いを生む、俺にだまされやがって馬鹿どもが」というような言葉を発した時も私は(これは今の国際紛争を風刺しているのか…)などと思った。

長い前置きとなったが、上述の私の解釈は行きすぎかもしれないし、作者である尾田栄一郎さんの意図を超えた突拍子のないものかもしれない。しかし私が言いたいのは、ある表現(漫画や詩や小説や文章やその他諸々)を生み出した瞬間にそのもの自身は主から独立して、自身の力を持つということである。そこには無数の解釈が生まれ、人々に無数の影響を与える。

まとめると、雄弁会とは言葉を扱うサークルであり、その一員である私は日頃から社会に対して言葉を吐く際に、まずもって言葉の力、表現の力というものを重々承知することが必要だと痛感したといったところです。

こんなくだらない文章を最後まで読んでくれた方に感謝します。
ありがとうございました。