「ふたつの代表」〜首長と地方議会のこれからの姿とは〜 政治経済学部一年 堀口 貴司

 
近年、地方に「改革派」とよばれる首長が増え、さまざまな行財政改革の取り組みが行われることが増えてきているが、いまだに政党の相乗りの構図で首長がきまる例も多い。

 大阪や名古屋では最近、首長と議会が対立する構図でマスメディアに取り上げられることも増え、地元を賑わしている。もともと法律が想定する二元代表制では、首長と議会はそれぞれ住民の直接選挙で選ばれることで対等・均衡の関係であり、議会はものごとを決める議事機関としてはたらくとともに首長の監視をも行い、首長は政策、事務の執行にあたる執行機関の役割を果たす。
制度的には両機関の間で異なる仕事を主とし、「抑制と均衡(チェック&バランス)」をはかることが期待されてきたが、日本の地方自治制度においては政党の「与党志向」はとても強いものがあり、議会は知事の施策への影響力の保持が、首長は円滑な議会運営が可能となるため、相乗りによる総与党化が多くの自治体で続いてきた。
しかも、日本は国際的にみて特徴的な二元代表制であるが、この場合自治体の首長は強大な行政権限をもつとともに、直接、議会への条例や予算案を提出する権利、さらには議会を解散する権限まで保持している。日本の地方自治制度では、地方議会の議員が議会審議を行い、独自に政策を提案していくことがあまり迫られてこなかった。よく国政は議院内閣制、地方の政治は大統領制と言われるが、大統領には議会へ法案を提出する権限はなく、議会へ要請をおこなうだけだ。大統領制は「権限の分散」が、議院内閣制は「権限の集中」が基本的な理念だが、日本の二元代表制は、双方の理念が混在している。
よって、日本では地方議会の総与党化と首長が強い権限をもっていることで、審議の形骸化や議会による首長の監視機能が十分果たされていないことが指摘されてきた。首長が監視されず、審議が行われず、なれあいや人脈で政策が決まったときにどのような事態が起こってしまうかは、これまで首長の汚職が発生したところや、現在財政危機に陥ってしまっている市町村のいくつかにその結果をみることができるだろう。

 総務省によると、2011年に地方自治法を抜本改正し、地方議会と首長の関係に広義の議院内閣制をとりいれるようだ。これによると、都道府県や市町村の首長が議員を在職中のまま副知事や副首長、部局のトップに起用することを可能にし、議員を政策過程や執行に参加させて、議員の政策能力を高めることや議会の活性化を目指しているという。議員を行政に組み入れることで、監視機能に更に悪影響を及ぼすことはないのだろうか。また、議員はますます高い政策能力を求められるようになっていくだろう。
 近年の改革派首長の活躍は、地方議会のさまざまな問題をあぶりだしており、国政の政権交代後の改革では今後もさまざまな変化をもたらすことになると思う。首長も、議員も自分たちの代表であり、すこしずつはじまった変化がもたらす影響をこれからも見ていこうと思う。