「なぜ、私が雄弁会に入るのか」 大学院ファイナンス研究科1年 稲波紀明


このままでは日本は、沈んでいく。

バブル崩壊後、20年を経過しても、
未だに成長軌道に乗れず、不況から抜け出せない。

為替相場は15年ぶりの円高水準になり、
市場では外国の安価な商品が溢れ、国内産業は徐々に淘汰される。

縮小していく市場の中で、企業は悲鳴を上げ、
外市場に成長の場を求める。

国内に残る多くの者は、雇用機会を得る事ができず、
失業者となり、治安の悪化を助長する。

縮小する景気は、家族間の関係を悪化させ、
離婚の割合を年々上昇させる。

分裂した家族は、少子化を加速させ、
人口を減少させ、国力を衰退させる。

高齢者が跋扈し、世代交代が進まない社会では、
世界のグローバル化から取り残され、活力は失われていく。


返済の見込みのない国の借金は1000兆円に迫り、
政府の政策実行時に重圧としてのしかかる。

この日本の財政状況が戦後かつて無いほど最悪な時に、
迅速な変革が必要な時に、相変わらず政府は無策だ。

政権が交代しても、首相が何度置き換わっても、
常に政府の政策は、国民の期待に答えられない。


もうこの国の経済を成長させる政策は既に無く、
経済活動が収縮していく流れから免れる事はできないのか。

世界の外交圧力に対抗する事も出来ず、
国際社会の中で沈下し、国家が衰えていく姿を眺める事しかできないのか。


そんな失望感が国民の中に広がった時、
私は尋ねられた。

  『何故、あなたは雄弁会に入るのか・・・』


私は現在MBAを取得する為に大学院に在籍している。
年齢は33歳。結婚もし、家庭もある。

これまでに10年間日本IBM
エンジニアやマネージャーとして働いた。

その間、アメリカのヴァージンギャラクティック社が募集した、
世界初の宇宙旅行に応募し、サラリーマンとして初めて宇宙旅行に当選した。

無重力や高重力下での宇宙旅行訓練に合格した。
もう間もなく、私は宇宙に行く事になるだろう。

テレビ、ラジオ、WEB(YUCASEEファウスト)でも
毎年のように紹介をされている。

  『そんなあなたは、他にやるべき事があるのではないのか・・・』と。


私は以前、天皇陛下にお目にかかる機会がありました。
御言葉を伺えた短い時間の中で、一言、

「日本の為に頑張って下さい」

そう仰って頂けた。その瞬間、

何か言葉では言い表せない感情が、
今まで抱いた事が無い使命感がふつふつと沸き起こった。

 --私は一体、誰のために何をすべきなのだろうか--

この日本の惨状を目の当たりにし、
社会のために、日本の為に何かをしていきたいと願う。


この雄弁会には、熱い志を持ち、
社会問題を考え、各人の理想社会を掲げる者がいる。

有能な才能を日々研鑽し、深い考えを持ち、
社会に向けて、情報を発信する者がいる。

私は彼らの言説に感銘を受けた。

彼らの若き荒ぶる魂の中に、
130年にわたる長い歴史の息吹を垣間見た。

彼らと共に、この国のあるべき姿を模索し、深め、昇華し、
社会に発信し、変革していく為にこの雄弁会で活動を行っていく。

古代ギリシャから語られるテーマ「国家」について、
彼らと酒を酌み交わしながら、過去の日本を語り、新たな日本の像を模索し、
あるべきこの国の姿を考えていく事にしたい。


明日を生きる子供たちが、
夢と希望を抱ける社会になるように・・・。