"戦いを終えて" 政治経済学部1年 村主太

1か月ほど前、私は東京都議会議員選挙の候補者を微力ながらお手伝いしてきた。前日の夜に「明日6時半に駅頭に」と言われ、遅れてはいけないと思い目覚ましを3個セット。朝、5時けたたましい音で目が覚める。眠い目を擦りながら隣の区の駅に到着。大声で候補者の名前を叫びながらビラ配り。2時間ほど配ったのち大学に行く。こんな生活を3日間ほど送た。たった3日間だけである。しかし、はっきり言って疲れた。こんな生活を毎日送っている議員秘書はなんて大変なのだろう。毎日、朝早く起き、自分以外の人のために身を粉にして働く。でも、社会の人からはあまり評価されない。なんという理不尽な仕事なのだろう。良い議員の秘書であればまだましかもしれない。変な議員の秘書であればもっと大変であろう。少しのミスで罵倒され、殴られる。とても理不尽だ。そんなニュースも最近ちらほら見聞きした。私は絶対、秘書にはならない。そんなことを感じた都議選の期間であった。

前置きはさておき、私が言いたいのは秘書さんの大変さではない。私が言いたいのはいかに若者が政治に興味を持っていないかということである。ビラ配りをしていて、若者の政治への無関心を肌で感じた。お年寄りの人たちは快くビラを受け取ってくれた。たとえ、受け取らなくとも彼らは目をあわせて一声かけてくれた。中年世代の人々もこちらのほうを見て、手を挙げてビラを受け取るのを断ってくれた。もちろん、受け取ってくれる人もたくさんいた。しかし、若者はどうであったか。彼らは耳にイヤホンをさし、手にはスマートフォン。声をかけてもこちらを見ることもない。こちらの存在に気がついているにもかかわらず、ガン無視である。いったい彼らはどのようにして投票先を選ぼうというのだろうか。もう特定の政党の支持を固めているのだろうか。それならばよい。しかし、もし投票先を決めていないのであればそれなりの行動があってよいような気がする。

断っておくが、私は別に若者にビラを受け取るべきだと言っているのではない。私だって自分の主義信条に合わない政党のビラは受け取らないであろう。私が若者に求めているのは何を配っているのかぐらいは見てほしいということである。どこの政党が配っているのか、どんなことを訴えているのか、そもそもこいつは誰なのか。そういうことに興味をもってほしいのである。目の前の小さな通信媒体のみを見つめ、いったい何が得られるというのだろうか。なぜ、気にかけてもらえないのであろうか。毎日とは言わないが選挙期間ぐらい、気にしてほしい。自分の投票先を選ぶ際に基準になるかもしれない情報を配っているのに、なぜ。

私はビラを配りながら、憤りを感じた。

まだ、このコラムを書いている時点では今回の都議選の年代別の投票率は公表されていないので本当に今回、若者が投票に行っていないのかはわからない。しかし、直近3回の東京都議選の20代の投票率を見てみると20%から30%の間で推移している。一方、60代以上になると直近3回の都議選投票率は55%から70%の間で推移していた。このことをふまえるとやはり若者は投票に行っていないのであろう。若者の政治への無関心の問題は確かに存在する。

ここで、私自身の話を少しさせてもらう。私は東京都民である。しかし、今回の都議選の投票には行けなかった。選挙権が与えられなかったからだ。私は19歳なので年齢的には問題はない。では、なぜ選挙に行けなかったのか。法律は選挙公示の前日を基準として3か月以上その地域に住んでいる人に選挙権が与えられると定めている。私はこの4月に東京に引っ越してきた。そのため、居住期間が足りなかったのだ。

しかし、もし、私が今回選挙権を与えられていたとして投票に行けたのであろうか。候補者を選ぶことができたのであろうか。私は今回の選挙では、投票する先を選ぶことができたという自信はない。もしかすると今回投票に行かなかった人の中には投票先を選べなかったが為に投票に行かなかった人もいるかもしれない。そのような人たちに提案したいことがある。投票したい人がいなかったらぜひ白票を投じに行ってほしい。誰にも投票する必要はないから、何も書かずに投票用紙を投票箱に入れてほしい。

白票を入れるなら投票に行かないのと同じことではないかと思われるかもしれないが全く違う。白票を入れるという行為が当選者に対する「あなたではダメです」というアピールになるのに対し、選挙に行かないことは当選者に対し何のメッセージも持たない。「あなたではダメです」という票が多ければ多いほど当選者は次の選挙を恐れる。良い候補がいれば白票を投じた人々はその候補に投票し、自分は落選するということを示唆しているからだ。当選者は次の選挙で自分が良い候補と思われるように必死になって働くであろう。

政治への無関心は時に腐敗した政治をもたらしてしまう。なぜなら、低い投票率は利益団体、圧力団体の票の価値を高め、結果として政治家は彼らの方を向き始めるからである。政治家は無関心の大衆はそっちのけで一部の団体の利益を追求し始める。それはすなわち私たち、大衆の利益が損なわれているということに他ならない。政治への無関心は私たち、大衆に害をもたらす可能性があるのである。

自分の住んでいる地域、そして日本の未来を作り、長期的に担っていくのは私たち若者である。だからこそ、我々自身が、未来の方向性を決めることができる選挙に行くべきではないだろうか。

若者のみなさん、投票に行こう。我々の未来は我々で決めよう。

投票したい候補がいなければ白票を投じよう。

皆さんの貴重な一票をぜひ無駄にはしないで欲しい。