一人ひとりの幸せvol.3

国際教養学部1年 佐瀬祥

本章では、前回まで見てきた問題に対する戦略を考えていきます。

前回までの私の問題意識を要約すると、高齢化と過疎化によって引き起こされる地方公共団体の税収不足と、それによる地域住民に対するサービス低下、またそれによって個々人が豊かさを確保できてはいないということです。つまりは地域格差であります。

 では、具体的に解決のための戦略を考えていきます。政策を打ち出す前に、一つ確認しておきますのは、この場合の地方は国から財源と権限移譲がなされている状態であることです。
 まず一つ目は、地方への企業誘致策である。企業誘致策にも二つの手段があり、ひとつはシャープの亀山工場の例に見られるような、都道府県による補助金付与の誘致策である。当時のIT不況下、135億円という補助金による誘致によって建設された亀山工場は、その後の景気回復の一例として話題を集めました。もう一つの誘致策はタックスへイブンのように法人税所得税を5〜10%期限付きで下げ、ひとまず人口の流入を図るのです。なぜこの政策が有効になってくるかといえば、モナコ公国の例を見て考えてみます。タックスヘイブンモナコでは、個人居住者に対して所得税を課していないため、モナコ国外からほとんどの収入を得ている富裕者の多くがモナコにやってきます。またシンガポールでとられている経済拡大奨励法というものもあります。それは、シンガポールにとって特に有益な事業への企業の新規参入と投資を奨励するために「パイオニア企業」といった分類が設けられ、税制上での優遇措置が図られているのです。それがどんなものであるかというと、最初の生産開始日から起算して5年〜10年間の全額租税免除という適用企業にとっては非常に有利なものです。このようにタックスヘイブンはひとまず富裕者や企業誘致を図ることが出来る手段となり、そこに地方の自然の豊かさや土地の広大さ、地価や物価水準の低さが合わされば、税収が減るというデメリットを、税金を払う企業数の増加によって克服し、企業展開や資金流入が可能となるのです。
 二つ目は、現在も行われている構造改革特別区域という仕組みを大々的に機能させることです。その際、現段階では国による財政的援助があっても、あくまでもそれは橋渡しであり、最終的には権限を地方自治体に完全に移し、財源移譲を果たします。具体的な施策でありますが、例えばNPO法人の参入により都市農村交流プログラムを展開し、交流人口を増大させ、集落機能の維持と地域経済の活性化を図ります。その交流人口には、金融恐慌で首きりとなった非正規雇用者も含まれ、雇用の確保というメリットもあります。地域の特性・ニーズに応じた多種多様な取り組みにより、地域それぞれの仕方で経済が活性化されるのです。
 三つ目は、子育て支援制度の強化です。過疎化・高齢化の一要因である少子化も解決されなければいけない問題であるため、地方における託児施設の充実さを図ります。子供を任せられるだけの保育士の充実さと施設設備の安全面も十分に考慮し、施設数も土地にあった数を建設します。また養育費の援助を増やし、二人以上の子供を持てば福祉・文化・体育施設の公共施設の利用料金が割安になったり、あるいは飲食店での会計時に数パーセント料金が引かれ、自治体が差額分を援助する形をとります。

 以上の三つが私が考える過疎化・高齢化による地域格差に対する政策です。地方における活性がそこに住む個々人の豊かさにつながり、それによって日本に住むすべての人が豊かさを得られることを願って本コンテンツを終了させていただきたく思います。