一人ひとりの幸せvol.2

国際教養学部1年 佐瀬祥
本章では、日本国における急速な高齢化の進展とそれに伴う地方での過疎化の現状と、地方公共団体の財政面での機能不全について分析していきます。

 総務省統計局によりますと、平成20年9月15日の段階で、高齢者(65歳以上)人口は2819万人で、総人口に占める割合は22,1%となっています。これを前年(2743万人、21,5%)と比べると、76万人、0,6ポイント増と、人口、割合とも増加を続けており、過去最高となりました。男女別にみると、男性は1203万人(男性人口の19,3%)、女性は1616万人(女性人口の24,7%)と、女性が男性より413万人多くなっています。年齢階級別にみると次のようになります。70歳以上人口は2017万人で前年比57万人増。75歳以上人口は1321万人で前年比53万人増。80歳以上人口は751万人で前年比38万人増となっており、70歳以上人口は初めて2000万人を超えました。また、過疎地域市町村として公示された市町村は731にまで達しているのです。

 この状況をどう見ることが出来るかといいますと、政治的に見れば中央政府への依存であり、経済的に見れば雇用を求めた人口移動であり、文化的に見れば高い教育水準の大学等への進学と見ることができます。つまりは東京への一極集中であります。
 
過疎化の影響は次のようになります。まずは交通網の縮小です。国土交通省の調べによりますと乗合バス事業者の7割以上が赤字を計上していますし、都市部に比べて絶対的な利用数が少ないことは運行本数の削減や路線バスの廃止となり、過疎地に住む自家用車を持たない高齢者の方にとっては非常に不便な生活を強いることになっているのです。次に雇用機会の縮小です。人のいない所に当然お金が集まるはずもなく、利益を上げることが出来なければ当然雇用も少なくならざるを得なくなるわけです。また社会教育施設、体育・スポーツ施設、コミュニティ関係施設や、高齢者福祉施設の整備状況も不足しているのも現状です。要するにインフラストラクチャー整備の問題であり、人口が少ないことによる税収不足でその整備を賄えるだけの財源がないということです。

このような問題のある過疎化を解決していく方向性としては、過疎地への人口流入を図る政策を打ち出すことです。都市部へ人口を集中させ政策を行うことよりも地方へ分散させて住んでいただくことのメリットを政策に盛り込みます。(政策の詳細に関しては次章分析)

 次に財政状況を見ていきます。過疎関係市町村の1市町村当たりの歳入に占める地方税収割合は15,1%に過ぎず、全国市町村の37,3%という割合と比較しても、その脆弱な財政構造は明らかである。自主財源に乏しいということは、地方交付税や過疎債等へ依存するしかなく、自立した自治体になることが出来ないのです。そこで考える解決の方向性としては、ひとまずの財源移譲であり、最終的に地方自治体一つ一つが自立して機能する暁には、各自治体のもとで生活する個々人がそれぞれの土地に見合ったアイデンティティなどの精神的豊かさを得ることが出来るし、自治体間の収益による競争活動がなされれば、地方ごとの発展だけでなく日本全体として安定した豊かさを手に入れることが出来るのです。

このような現状を踏まえると、個々人の豊かさを求めるわたくしの社会像と現実に存在する過疎地域での暮らしは程遠いものであるのです。インフラをはじめとする充実したサービスの欠如や、所得格差は豊かな生活を阻害するものであり、解消されるべきものであるのです。

以上が地方における過疎化の現状分析と解決の方向性になります。では次に、いかにこの過疎化による地方間格差を解消し個々人に豊かさをもたらすか、具体的に戦略を考えていきます。