隠れた世界vol.2

文学部1年 奥田綾香
サハラ以南のアフリカに飢餓が集中していることはのべたが、そのなかでも西アフリカはその心臓部とも言われる地域であり、近年のこの地域の人口増加率は非常に高くなっており、食糧生産が追いついていない状況だ。そのような状況で、1970 年から2000 年にかけて、西アフリカ地域では人口が約2.3 倍に増えたが、この人口増加率に対して最も優位な増収を示したのはコメであった。この地域住民の主食は必ずしもコメだけではなく、乾燥・半乾燥の著しいサヘル地域ではミレット、ソルガムといった耐干性のより優れた穀物が、ギニア湾に面した湿潤・熱帯地域ではヤム、キャッサバといったいも類が主食とされている場合が多い。しかし、ミレット、ソルガムは、度重なる不安定な気候条件や農地劣化の影響を受け、その生産量は人口増加に及ばないものであった。一方、キャッサバ、ヤム等のイモ類の生産量と収穫量は格段に高いが、単位重量当たりのカロリー量はコメ、トウモロコシ、ミレット、ソルガム等の約1/3、タンパク質含量は約1/8 といわれている。キャッサバを中心とするイモ類が西アフリカの重要主食作物であることは確かだが、このようなイモ類偏重は、貧困層のタンパク質、ミネラル摂取量を減らし続け、食生活面に大きな影響を与えている。コメはミレット、ソルガム同様、栄養価が高く、食味にも優れている。また、キャッサバに代表されるイモ類よりも貯蔵性に優れており、人口が膨れ続ける域内の、特に都市部においては調理の簡便性、長期保存性から需要は益々増加している。1970 年から1990 年にかけて、域内における一人当たりコメ消費量はほぼ2 倍の増加を示し、西アフリカにおける主食作物になる可能性を有している。これらのことを念頭において、西アフリカでの農業形態の現状について言及したい。西アフリカの00年の全稲作の総面積は364万ヘクタールであり、稲作面積ではとしては陸稲が216万ヘクタールと一番大きく、次いで内陸小低地稲が76万ヘクタールとなっている。陸稲栽培のほとんどが雨季の天水に依存した焼畑で行われ、従来、火を放った1年目だけイネを作付け、次年以降は数年かけて再び山野にもどすやり方であった。しかし、近年の人口圧の上昇から、かつて10 年周期であった焼畑サイクルは5年に短縮され、本来耕地とは不適切な傾斜地まで作付面積は拡大しており、このことが環境の悪化、森林減少を招いていると考えられる。一方、内陸小低地稲に関しては、熱帯アフリカでは内陸小低地が内陸大盆地に次いで低地面積が大きく、この内陸小低地の現在の作付面積は、1000万ヘクタール以上と推定される全可耕地面積の約5パーセントにすぎないので、今後の開発が期待できる。さらに、小低地は源流部にあるので、水田システムの整備による低地利用の拡大による稲の増収効果は高い。内陸小低地の非水田区では肥沃度が比較的高い谷底の土壌に標準の施肥をしても最高3t/ha程度の収量しか期待できないのに対し、水田区では3.5t/haの増収になり、水田化による施肥効率の上昇も大きいことがわかる。しかし西アフリカの内陸低地土は自然環境条件が主要因ではあるが、非水田稲作の継続により水の流れをコントロールできず、粘土成分の流亡を加速させている。このことが比較的肥沃な谷底土壌の砂質およびの貧栄養化に結びついている。谷底では稲作後の乾季でも、裏作を行う十分な土壌水分が残ることから雨量の少ないサヘル地帯でも稲作が可能となる内陸小低地が出現する要因となっている重要な部分でもある。さらに現在、世界銀行などの援助プログラムによる灌漑水路も、非水田のままで大量の灌漑水を引くことで土壌浸食を激化させている。
以上のことから、水田稲作によって、自給自足生活への第一歩をふみだすための政策提言をしていきたい。