一人ひとりの幸せvol.1

国際教養学部1年 佐瀬祥

幸せを感じるときはいつですか。今すべての人は個々人の生活に満足しているでしょうか。

現在、少子高齢化という時代潮流の中、地方においては過疎という問題が顕著になっています。過疎から起きる問題は何かといいますと、当然労働力人口の減少による経済活動の停滞と生活水準、経済成長率の低下。地方公共団体の税収不足によるサービスの低下。インフラストラクチャーの喪失に加えて、企業の倒産までと次々に負の連鎖が続いてしまうのです。シャッター商店街や、寂れた温泉街への様変わりは、地元住民に精神的な悲しさを覚えさせるでしょう。過疎化による地方衰退は容易に止められるものではなく、このような現状では日本全土の個々人が日々の生活に「物的豊かさ」や「精神的豊かさ」を感じることが難しくなっているのです。

現在の実際の高齢化状況でありますが、東北、中国、四国、九州地方のほとんどの県では人口が減少する一方、高齢化率は20パーセントを超え、2025年には30パーセントを超えると予想されていて、例えば私の出身の福島県における実際の過疎地域の高齢者比率は、平成17年の段階で31,1パーセントに達しています。首都圏の比率が約15パーセントであることから違いは明らかであります。このように、地方における少子高齢化と過疎化が深刻な問題となっていて、地方の人は個々人の望む生き方を都市部の人よりもしがたいという現状がある。例えば所得面から考えたとき、福島県と東京都の一人当たり市町村民所得の格差は約二百万円であり、過疎地域のそれは東京都の半分なのである。よって少子化による現役世代の負担が増大し、年金などの社会保障体制の維持が困難になっているこのご時世、より顕著に若者がいなくなっている地方の現状を鑑みれば、少子化と過疎化は並行した問題でありともに問題が解決されれば、人々がより幸せを感じることが出来ると思うのです。

過疎化の原因である、政治、経済、文化の東京への一極集中は、明治時代以降の中央集権国家の名残であることから仕方のない一面もあるが、雇用が明らかに足りないことから雇用を求めて、求人倍率が約2倍の都市部へ流出してしまうこともまた不可避であります。しかし、地方における人同士のつながり、その場所でしか出来ないものの生産、観光業の活性化によるその地方だけの価値あるものの創造によって内発的に発展させることは地方再生にあたって非常に重要なことです。また企業誘致の外発的発展を今までとは違う政策を盛り込んで行うことも並行して必要となってきます。地域発の商品をブランド化しブランドコンセプトの普及、浸透を図り、ハイリターンを得るのです。例として北海道札幌の食品産業クラスターを挙げます。大豆の地産地消拡大のための新たな加工技術開発と特産品づくりを目的として、平成12年に札幌圏の食品メーカーが中心となって産学官、それに消費者団体を加えた大豆クラスター組織「札幌圏豆くらすたぁ」というものが発足しました。当初は行政の補助金も利用しながら事業を行っていましたが、その後、多方面の企業に会員も拡大し、現在では独自の栽培基準に基づき札幌圏で生産された「札幌大豆」を用いた新しい加工食品の開発と販売が進んでいるのです。これは地場産業の競争力強化及び農業への波及効果を通じて地域経済の活性化につながるのです。

本コンテンツでは、この二つの方向性を軸に、私は地方再生に注目を置き、最終的には人々一人一人の持続的豊かさ確保について考察してまいります。