「"泥のように"働けますか?」

商学部2年 花房勇輝

「泥のように働いてください」
この言葉を投げかけられたら、あなたはどのように感じるだろうか?
言葉通り、"泥のように"働けるだろうか?

先日、このような話を聞いた。
とあるIT業界の就活イベントで司会者が、伊藤忠商事丹羽宇一郎会長の「入社して最初の10年は泥のように働いてもらい、次の10年は徹底的に勉強してもらう」という言葉を紹介した。そのうえで司会者は、この言葉に賛同するかどうかを挙手で問うたところ、イベントに来ていた学生は誰一人挙手しなかったらしい。

そもそも、「泥のように働き会社に奉仕する」、という考えは、経済学者の池田信夫氏によれば「組織が永遠に不変で、自分が定年までそこにつとめるという前提でのみ成り立つインセンティブ」なのだという。

たしかに、会社間・労働者間の競争がより激しくなり、いつリストラされるかわからない、いつ会社がつぶれるかわからない、という現状において、「泥のように働いて会社に奉仕する」という考えもナンセンスに感じるのだろう。

泥のように働くだけよりも、自分の趣味や家庭生活にも時間を費やしたい、という価値観が広がってきている。


では、このイベントの主題であるIT業界の現状はどうなのだろうか?

IT業界(特にSEなどの技術系専門職)は労働環境が厳しいということで知られている。
IT業界=厳しい、というイメージも広まり、IT関連の企業が求人を出してもほとんど募集がこないのだという。実際にIT企業の46.5%がこのことを嘆き、「深刻な問題だ」と答えている。

泥のように働く(労働環境が厳しい)ことを労働者が拒否しているということは、会社側はこれに譲歩する必要がある。つまり、自分の趣味や家庭生活にも時間を費やせるようにワークライフバランスを確立する必要がある、ということだ。

ワークライフバランスの確立のためには、各企業の努力のみならず、人材育成や補助金といった面での行政のかかわりも重要となってくる。詳細は以下をごらんください。

(2007年度後期政策集団「護り手」合同コンテンツ「嘆きからの脱出」 http://d.hatena.ne.jp/yu-benkai/20080301/p2

泥のように働かなくてもいい、自分の趣味や家庭生活に時間を費やせる。時代のニーズ、価値観を反映した変革が求められる。