「地方を...どげさする?」②

政治経済学部1年 仲條賢太

今回は、地方財政の現状分析を行っていきます。



地方自治体が行う支出は、統計上、公共支出全体の約六割を占めています。しかしながら、地方自治多全体の税収は、国と地方を合わせた税収の約四割しかありません。では、全税収のうち約4割しかないのに、どうして国と地方を合わせた全支出の約六割を賄うことができているのでしょう。国が得た税収のうち、その多くを地方自治体に配分しているからです。税収が少ない地方自治体に対し、国は手厚い財政保障を施してきました。では、具体的にどのような財政保障の制度となっているのでしょう。


地方自治体の歳入を見てみますと、その内訳は、主に①地方税、②地方交付税、③国庫支出金、④地方債となっています。これらで地方自治体の歳入のほとんどが賄われています。ですが、これらの歳入項目には、それぞれに中央集権的な性格があるのです。


1.

地方税は、地上自治体が得る税収の中でも、最大の規模を有する財源です。地方税の税目と税率は、原則的に地方税法で定められています。しかも、同法定められている標準化税率よりも低い税率で課税する自治体は、地方債発行が制限されるという、罰則まで設けられています。そのため、自治体のほとんどは、地方税法に準拠して課税を行っています。近年、2000年4年に施行された「地方分権一括法」で法定外目的税が新設されたことによって、独自課税(地方税法に定められていない税金を独自に課税する)の動きが進んでいます。現在、産業廃棄物税や森林・水源環境税といった「地方環境税」等が、自主財源として制定されています。しかしながら、税収規模からすれば限定的なものに留まっています。


2.

地方交付税は、国が国税の一定割合を、使い道を決めずに自治体へ移転するものです。地方交付税の税源は以下の国税5税です。

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所得税および酒税の32%
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法人税の34% 
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消費税の29.5%
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たばこ税の25%

そして地方交付税の種類は以下の2種類です。

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普通交付税:財源不足団体に対し交付(総額の94%)
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特別交付税普通交付税で捕捉されない特別の財政需要(災害等)に対し交付(総額の6%)

自治体によっては基準財政収入額が基準財政需要額を上回ったり、均衡を保っているところもあります。こうした地方自治体に対して地方交付税は交付されません。現在はほとんどの地方自治体が交付税を交付されていまが、2007年度には不交付団体が186ありました。内訳は、都道府県が東京都と愛知県で、市町村は184です(他に東京都23特別区)。不交付団体の特徴は、大都市圏所在市町村、電源立地市町村、観光資源が豊富な市町村である点です。


3.

国庫支出金は、国が自治体に使い道を特定して配分する補助金です。自治体が分担した国の業務や国が奨励する施策などに対して配分されるため、自治体側に裁量の余地はほとんどありません。


③地方債は、地方政府がその支出をまかなうのに十分な財政収入に不足する場合、不足資金を調達するために負担する債務のことで、その返済を二会計年度以上にわたって行うものを指します。償還を同一年度内に行わなければならないのは、一時借入金と呼ばれるもので、一時的な現金不足を補うが目的である点で地方債とは異なります。地方債は、特定の使途のために自治体が行う借金のことですが、原則的に自治体は、地方債を自由に発行することができません。2005年度までは、地方債許可制度といって、地方債を起債するときに自治体は総務大臣または都道府県知事の許可を受けなければならない、という制度が続いていました。2006年度からは、地方債協議制度に移行しましたが、起債する債の同意や許可は総務省が事実上統制しているのが現状です。


このように、地方財政制度は、歳入面から見ると国の関与が強い仕組みになっています。

 

近年では、こうした国の関与が強い地方財政構造を見直そうと、地方分権改革が進んでいます。その最たるものがいわゆる「三位一体改革」です。

三位一体改革」は、小泉政権下の2002年に地方税地方交付税、国庫支出金(国庫補助負担金)を一体的に改革して地方分権を促進していくことを目的に行われました。

一連の改革は、地方税の充実を確保するために課税自主権の拡大を図ることが明記された点で画期的なものでした。つまり、自分たちが自由に使える自主財源が欲しい、という地方自治体への長年の要求であった税源移譲が実現したのです。そして、地方の地方交付税への依存を低下させるべく、財源保障機能を全般的に見直して縮小することが明記されました。また、国庫補助負担金の改革は、国の関与を少なくさせるという点で、地方の自立のためには望ましいでしょう。

しかし、「三位一体改革」を手放しで賞賛するわけには行きません。むしろ「三位一体改革」には重大な落とし穴がありました。「三位一体改革」は、税源移譲と、国の財源保障や関与の現状維持を前提としていました。それは、税源移譲を国庫補助金の削減とセットにして行い、財源保障を担わせる地方交付税の改革は、それらとはやや独立して行うという方向性でありました。

しかし、財源移譲と国の財源保障・関与の現状維持を前提とした結果、以下のような事態が生じました。税源移譲を優先させたことで、経済力のある地域の税収は大きく増えますが、過疎部の自治体の税収はそれほど増えません。むしろ、過疎部の自治体では税源移譲による税収増加額よりも、国庫支出金の削減額のほうが大きく、結局自治体の収支が悪化するということになりました。

改革と同時並行で5兆2000億円あまりの地方交付税等が減額され、2004年度予算の時点で総額20.4兆円にのぼった国庫支出金のうち、分権改革の対象となったのは4兆円分のみで、総額の1/5に手をつけたに過ぎません。三位一体改革後も、地方が要求した公共事業関連の国庫支出金は、交付金化されただけで事実上温存しているし、国と地方の税収比率は57%:43%となる見込みなので、依然として支出と収入の間に大きな財政ギャップが残ることになっています。今後国庫支出金の更なる廃止・縮減を行い、中央政府と地方政府の税源比率を、その仕事の比率である4:6に税源移譲を行うのが望ましいでしょう。


さらに、地方自治体の4つの主要財源のうちの地方債の改革が、「三位一体改革」では手付かずのままでした。そのため、「三位一体改革」に従い財源が減った自治体で、地方債で当分それを補うという懸念が出ています。ところが、そうした自治体の多く(過疎地域に多い)は、地方債をそもそも独自の税収だけで債務返済できる経済力はないのです。そうすると、中長期的に、地方交付税などを用いた国による救済要求が高まってくることが容易に想像できます。「三位一体改革」は、地方自治体の自立を促す目的で取り組まれたはずでしたが、結果として必ずしもそうでない時代を招いているのです。「三位一体改革」と同時期に並行して行われた市町村合併も、地方の財政的自立・効率化を目指すための施策だったのに、現実にはそれ自体が自己目的化し、交付税の上乗せや、合併特例債の発行容認などが国への依存をかえって高めてしまう事態を招いた事例もあります。これでは何のための地方分権か分かりません。



次回は、これらの分析を踏まえ、ポスト「三位一体改革」の地方財政の制度、地方債に関する現行の制度の不備を指摘し、その上で、今後の地方財政に必要な方策を提示していきます。