合同コンテンツ「嘆きの職場」

商学部1年 花房勇輝

職場は今、嘆きに包まれている。

心筋梗塞で死亡。毎日夜十一時まで勤務し、休日は月二回しかなかった」(地方公務員)

「心肺停止で意識不明。水害や中越地震以来ほとんど休みがなかった」(33歳、測量士

「納期に追われ、長時間労働による急性心不全で死亡した」(41歳、機器メーカー)

労働者たちは今、疲弊しきっている。

国際規模での経済戦争において最前線と化した職場において、多くの労働者たちが命を落としている。自らの多忙な業務によって、である。

現代の社会はストレス社会であると言われている。この社会は、多くのストレスで満ちている。そのストレスが、個人に与える影響やその種類は、個々人や状況によって千差万別である。

しかしながら、そうしたストレスを積み重ねていくことによって、精神的に追い詰められ、時には心の病にかかってしまうことは事実である。さらに、現代における社会的・経済的ストレスは、個人にとってとても重くのしかかる。心の病は、人を心理的狭窄の状態に陥れ、「今自分が抱えている問題を解決するには、自殺しかない」という非常に狭い思考から人を抜け出せなくさせて、最悪の場合自殺にいたらしめてしまう。こうした自殺者は、この国には年間3万人以上も存在する。自殺未遂者の数をくわえると、その数は実に数倍にもなる。このように、経済的な要因によって非常に多くの人が自殺に追い込まれる社会、精神的に追い込まれてしまうこの社会は、まさに異常であると言わざるを得ない。

その要因のひとつに長時間労働、そして過労死・過労自殺があるのだ。

想像していただきたい。

家庭をもつ親が、その家族のためにと懸命に働く。仕事量は多かったり、大変な仕事だったりするが、それでも精一杯働く。
しかし、その仕事の大変さゆえに、家族と交流する時間や心の余裕など持てない。家を出るのは、皆が寝静まっている早朝。家に帰るのも、皆が寝静まっている深夜。たまの休日も、その疲れを少しでも取るために死んだように眠っている。
家族のためにと働いているのに、その家族と接する時間も持てない・・・。
やがて、仕事での疲労も限界に近づいてくる。精神的に追い詰められてしまう。
そしてある時、ある者はストレスに由来する突然の病に倒れ、ある者は自殺する。
愛した家族は取り残され、絶望の淵に立たされる・・・。


このように嘆き苦しんでいる人々は、一体どれほどいるのだろうか。
厚生労働省の「脳・心臓疾患および精神障害等に係る労災補償状況」によれば、「脳・心臓疾患による労災補償の請求件数」は2003年度から2006年度で742件、816件、869件、938件、と増加している。また、同様に「精神障害等による労災補償の請求件数」でも447件、524件、656件、819件と右肩上がりとなっている。

これら「脳・心臓疾患」と「精神障害等」のうち、死亡にいたる場合を通常、それぞれ「過労死」「過労自殺」と呼ぶ(あくまで労災補償上の意味)。

前者、つまり「過労死」または「脳・心臓疾患による死亡」の請求件数は、2003年度から2006年度で319件、335件、336件、315件と毎年300件を上回っている。一方後者の「過労自殺」または、「精神障害による死亡」の請求件数は同様に122件、121件、147件、176件と、特に過労自殺は明確な増加傾向にある。

ただし注意するべきは、これらの数字はあくまでも労災申請に基づいたものであり、労災申請に至らない「過労死」や「過労自殺」は含まれていないということだ。表面化した件数以外に隠れた実数が残されている可能性は高い。

長時間労働、そして過労死・過労自殺。この問題を解決しなければ、懸命に働く労働者たちを「精神的に追い詰められてしまった状況」から救い出さねばならない。

そして、「人がその生涯にわたって安心感を享受できる社会」を実現しなければならない。

よって私は、長時間労働、そしてその結果発生してしまう過労死・過労自殺について現状分析と政策提言を行っていく。