「まだ見ぬ後輩たちへ」 社会科学部一年 宇治舞夏

 二月中旬、大学の近くを通ると「早稲田入学試験場」の看板が掲げられていた。一年前にもその前の年にもこの看板を見ながら早稲田に憧れる受験生だったことを思い出した。あの頃は自分がこの雄弁会に入るなんて思ってもいなかったし、さらに言うと雄弁会の存在すら知らなかった。そんな私だったが、この雄弁会で一年間私なりに精一杯活動を行ってきた。
私がなぜ雄弁会を知り入会することにしたかについては長くなるのでここでは省略する。しかしひとつ大きかったのは「新歓コンパで先輩方と話していて面白かったから」である。一見どのサークルにも当てはまりそうな理由に聞こえるかもしれないが、雄弁会における話の面白さは他とは違った。雄弁会以外にもいくつかサークルの新歓に行ったが、たいてい出身地や学部、話がはずめば軽い趣味の話もしたりする、その程度だった。うわべだけの会話だし、寝て起きれば何を話したかなんて忘れてしまう。しかし、雄弁会では現代において何を問題に思っているのか、どう変えていきたいかということについて聞かれる。それに答えていくうちに、自分について普通の友達にもあまり話したことがなかったような深い話までしていた。このような深い内容について話せる人は周囲にほとんどいなかった。それなのにもかかわらず、目の前にいた初対面の先輩方には話すことができた。雄弁会自体がそのような問題を扱って研究を行っていくようなサークルであるからということも考えられるが、それだけではないと思う。
雄弁会の先輩方は、本当に様々な魅力的な人がいる。今まで中学や高校でも大人数の学校に通っていたため、多くの人と関わってきた自負はある。しかし、今まで出会った多くの人々のどの人とも似ていなかった。そのため、どの先輩方と話をしてもそれぞれいろいろな考え方を持っていて、コンパの間の二時間弱はとても刺激的だった。帰宅してからもそのとき出会った様々な考え方が頭の中をぐるぐるして、興奮して眠れなかったことを覚えている。またその人たちと話したくて通っているたびに、気づいたら入会していた。これが、私がなぜ雄弁会に入ることにしたかについての大きな理由である。

 四月にどんな新入生が入ってくるのか。一癖も二癖もある後輩たちが入ってくるだろう。私たちはあのとき憧れた魅力的な先輩方のようになれるだろうか、そんな期待と不安が入り混じる。早く後輩たちと面と向かって話をしてみたい、きっと、後輩たちからもいろんな考え方を知ることができるだろう。そんな期待で胸が膨らむ今日この頃。