「新しい派閥」

商学部2年 花房勇輝
年功序列」、「終身雇用」、そして社内に発生した「派閥」。いずれも、戦後日本の高度経済成長を支えた、日本型企業システムを象徴する言葉だ。近年、この日本型企業システムに取って代わるものとして導入されているのが、欧米式の成果主義である。この成果主義の導入によって、これらの言葉は旧時代の産物であり、これらの制度は解体されたかのように捉えられている。しかし「派閥」に関しては、成果主義導入下でも健在である。

成果主義がもたらした荒波を「自分だけはなんとかしてかいくぐりたい」という思いから見られる新たな動き。それが「新しい派閥」の発生だ。成果主義のもとで、現状のままでプラス評価を手に入れるためには、個人で手堅くクリアできる目標を掲げるか、評価される力を外部から見つけてくることに尽きる。
競争が激化するなかでは、上司から高い目標が求められるため、目標を甘めに設定することは難しい。「定年近くまでは働いていたい」と思うなら、自分以外の力を頼みに、自己防衛のために生き残りをかけ派閥に所属するしかない。派閥にくみすることで、ある種の保証を得るのだ。

この新タイプの派閥について具体的に説明しよう。たとえば、革新的な業務ではないものの、それなりの成果が出る仕事をしているAチームと、巨大プロジェクトではあるが、簡単には成果が出ない業務に従事するBチームがあるとする。Aチームの仲間になったほうがここ3〜5年の生活は、安定する。そこでAチームに所属することにする。
成果主義下のチームは容易に移動が可能なため、自らの目的を果たしたなら、Cチームに移り、その後はDチームに移ることも可能だ。このチームが、危うい派閥を生み出している。新タイプの派閥は、チームから派生した一時的な集まりであって、仕事に対する目的意識や結束力を欠いていることが多いためだ。
刹那的な考えが組織にはびこって、目先の評価だけで社員が行動し、危うくもろい派閥が生じては消えていく。このような会社に、長期的な発展は見込めないだろう。

さらに、近年社会問題化している、職場に広がるうつ病などの精神疾患過労自殺を、この「新しい派閥」を生み出した成果主義が助長しているともされている。こうした問題は当の社員だけの問題ではない。その企業に対しても、貴重な人材の損失や、損害賠償の請求、企業イメージの低下などにつながる大きな問題なのである。

このような現行の成果主義の問題点を解決する必要がある。
例えば、もし成果主義を貫きたいのなら、以下のような解決策が考えられる。業績が上がった場合の評価は部署の所属メンバー1人ひとりでなく、チーム単位にする。グループ全員が力を出し合って、より大きな成果が出る仕事があるためだ。あるいは部下の教育で功績を示した人や、相談に乗ってあげられた人に対して、もっとプラスの評価を与えてみる。この評価は、デジタル式の現行システムでは、査定できないだろう。

このように、現在の成果主義を改善していくことは、社員の心身の健康を守るのみならず、その企業の長期的な発展にも寄与する。今こそ、導入された成果主義を見直し、「新しい派閥」を解消すべき時ではないだろうか。