「Dead Man Working」 vol.3「〜どんな産業を育成すべきか〜」

教育学部一年 岡田想

前回のコンテンツで地方産業創出の前段階として必要な企業家・人材育成について述べた。実際に地方で産業を創出する場合にどのような産業がふさわしいのかを考察していきたい。
 まず考えられるのが「医療・福祉関連分野」である。人口に占める高齢者の割合は15%を超えており、それは地方においてより高いのである。そして、今後も医療の発達などにより高齢化は進むため医療福祉関連の産業に期待が寄せられるのである。1961年に国民皆保険が実現し76年には老人医療費が無料化されるなどの影響もあり、人々は広く病院を利用することとなった。そのため1960年には4000億円だった国民医療費も90年代末には30兆円に迫る勢いとなっている。今後は非営利とされてきた病院も効率的にサービスを行うために、サービス産業化するものと予想される。また、福祉サービスを中心に福祉機器・福祉用品レンタルの産業が発展すると予想されている。
 次に「余暇関連分野」である。これも高齢化と関連してくるのであるが、比較的時間とお金の両方にゆとりのある高齢者が増えることにより発展すると予想される。具体的には旅行業・スポーツ施設提供業などが考えられる。
 「環境関連分野」にも期待が集まる。20世紀が生み出した大量生産・大量消費・大量廃棄というシステムは、現在いたるところでほころびを見せている。例えば公害問題や地球温暖化、ごみ問題などである。これに対応して台頭したのが環境産業である。具体的には廃棄物処理・リサイクル装置の開発、環境保全資材・製品の開発などである。プラスチック成形材料製造業は再利用目的のものや、自然分解に特化したものや、小麦から作られたものなど種類が豊富である。
 そのほかに「ビジネス支援関連分野」もある。企業間競争の激化に伴い、経営の効率化、生産性の向上を図るため、国内企業においてアウトソーシングが進展している。今後は外部の専門的な技術・情報等の活用による自社製品・サービスの高付加価値化等を図るなど、より一層戦略的な観点からこうした動きが進んでいくと予想されるため、それを支える人材育成業の発展が見込まれる。また、人的資源が常に適材適所の状態に配置され個々の労働者の潜在的な能力を発揮できる環境の整備が必要になってくるため、民営職業紹介業の発展も予想される。
 以上、地方産業において発展が望まれる代表的な産業について述べてきた。ここからは地方産業が創出された上での課題について述べていこうと思う。
 第一に考えられるのは、地方に産業を育成したからといって全てのワーキングプアの問題が解消されることはないといった問題。賃金の低い業種で働く人は必要となってくる。これに関しては社会保障を充実させるという方向性がよいのではないだろうか。地方に産業を充実させることで、法人事業税や法人住民税など地方(ひいては国)の税収が増える。これを社会保障にまわすことでこの問題に対応することができるものだと考えている。
 第二に産業創出後の教育訓練である。新産業が創出されたからといってそこで働けるだけの能力をワーキングプアの人々に付与できなければ問題の解決には至らない。これに関しては先日厚生省が決定した、ネットカフェ難民への支援金の拡大とOJT(On the Job Training=企業内研修)を中心とした職業能力開発で対応できるのではないだろうか。
 これらの問題点にはまだまだ議論の余地があるため今後の研究の中心としていくつもりである。
 最後に、今回挙げた産業のほかにも地方において発展が予想される産業はまだまだあることだろう。しかし、大切なのはそれを見極められる人材を育成できるかどうかである。地方においてそのような人材が多々輩出され、地方産業の活性化が起こりワーキングプアの方々が現状から脱することができることを願って本コンテンツを終了させていただきたいと思う。

本コンテンツが読者の皆様の新たな観点に繋がれば幸いです。