第一弾:自分なりの豊かさのために

政治経済学部1年 佐藤有希子


一人暮らしを始めてから、すっかり生活が不規則になり、そのせいか、最近、以前よりコンビニのお世話になることも多くなりました。コンビニの魅力はなんといっても24時間営業と豊富な品揃え、つまりは利便性です。なぜ利用するかはさておき、このように非常に便利なコンビニを利用したことがない人はもはや日本にはいないのではないでしょうか。
しかしながら、このコンビニに限らす、さまざまな産業において基幹労働力となりつつある非正社員をめぐる現状に目を向けてみれば、手放しにこの利便性をよろこぶことはできません。
昨今は雇用・設備・債務の3つの過剰が解消されたために景気回復したといわれております。しかしながら一方で格差社会の到来もさかんにいわれております。今年度の労働経済白書の原案では、非正規雇用の増加が所得格差の大きな要因だとしております。バブル期までは努力をすれば、生活していけるだけの所得を得ることができました。しかしながら、今は本人の努力だけではいかんともし難い現状があります。
90年代、ニューエコノミー台頭により社会的必要労働力の数は減り、企業のコアとなる労働を行う椅子に座れる人数は限られています。そのためどれだけ努力しても、正社員になれるとは限らないのです。つまり、企業はクリエイティブな能力、専門的知識をもった労働者と同時に、単純労働者も必要としているのです。このため、人件費削減・雇用の流動化などの目的とあいまって、企業は非正社員を増加させてきました。また政府も労働者派遣法改正で規制緩和をし、この流れをすすめてきました。このため、働いても働いても生活保護水準以下しか稼ぐことができない、ワーキングプアといわれる人々が顕在化してきました。労働は暮らしを支える収入源です。しかし彼らはその収入が不足しているため、常に不安を抱えながらすごしているのです。先日のNHKスペシャルの特集をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、ワーキングプアは、経済的合理性を追求するシステムにおける、構造的な問題であって、けっして本人の努力が足りないといった個人の責任に帰すことができない問題なのです。とりわけ、若年層は非正規雇用者が多く、経済格差が拡大していることから、今後は特に若年層においてワーキングプアとなるリスクは高いと考えられます。というのも、非正規雇用においては就職氷河期にやむを得ず非正社員として就職し、能力開発の機会を得られず、そのまま非正規雇用として働き続け、その後年齢制限のため就ける職業が限られてしまい、収入を増やす機会が得られないからです。企業はコアとなりうる人材に対しては職業訓練を行いますが、そうではない人材に対しては職業訓練に対しあまり意欲的ではありません。コアとなる人材のみに職業訓練をおこなった方が投資収益率が高いからです。
果たして、このように企業の市場価値における「豊かさ」、経済的合理性のため、人としての「豊かさ」が実現できない社会でよいのでしょうか。私はこれに対しNOと答えざるをえません。経済は本来わたしたちの生活をよくするためにあったはずです。しかしながら今の経済システムを見るに、「経世済民」の志は消えゆき、生活を支配する檻にすぎなくなってしまいました。その人なりの「豊かさ」を実現するためには、最低限生活していけるだけの経済的豊かさが前提となるのです。このような現状に対し、私は政府がこの「豊かさ」の前提条件となる最低限の経済的保障をしていくべきであると考えます。なぜならば、政府はこのようなひとりの力だけではどうにもならない構造的な問題に対処するためにあると考えるからです。
そのために、なぜワーキングプアが改善されないのか、その原因と政府の施策、またどうすれば「豊かさ」を実現できるのかを考察していきます。