トンネルの出口

法学部1年 金子萌


 自民党総裁選の動向が連日メディアをにぎわせている。自民党の総裁はイコール日本国首相であるから、やはりその動向には私自身非常に気になっているところである。

 その一方で5月下旬、自民党税制調査会は、現在行っている子育て支援としての所得税からの減税(現行では一人当たり年に38万円を免除)を、少子化対策として年齢制限を設け、成人したニート・フリーターを対象外にする方針を固めた。これによって、ニート・フリーターがいる家庭には負担が増すことになる予定だ。少子高齢化による労働力の減少を補うため、ニート、フリーターを抱える世帯の税負担を増やすことで、ニート・フリーターの本格的な就労を促進する狙いもある、ということであるが、こうしたいわば「強制」による方法での就労に関して私は疑問を感じるのである。こちらのほうにむしろ注目して、考察していきたい。

 昨今は景気回復があちこちで言われている。企業が業績を回復、向上させたというニュースは近年よく耳にするようになった。7月26日には、来春新卒の就職活動に関してバブル期なみの売り手市場であると毎日コミュニケーションズが発表した。しかしながら、景気回復の裏で徐々に進行しているものがある。それが、「中高年フリーター」と呼ばれるフリーターの高齢化である。ここでいう中高年フリーターとは、パート・アルバイトをしている35歳以上の男女と定義する。これらの方々は、景気回復が言われるようになった今日以前、すなわち就職難時代に、就職からもれたり、やりたい仕事が見つからなかったり、もしくはリストラされたりといった理由でフリーターになった方々である。
現在のフリーターの平均年収は男性では180万前後、女性では120万前後で頭打ちとなっており、いくら仕事をしても生活が苦しいままである。また中高年フリーターが正社員になるのが難しいことも追い討ちをかけている。そして、現在の若年フリーターにおいても正社員になることは簡単ではなく、中高年フリーターが増加するのは避けられないであろう。この中高年化するフリーターに対して「強制」を行う政府。

 ではなぜ、こうした現状が起こってしまったのであろうか。それを考察していきたく思う。
 現在の中高年フリーターが生まれた原因、それは

①単線型の教育のもと「学歴」という価値観しか提示できなかった学校、
そして
②長い不況に起因する就職難、就労構造の変化や利益確保のため、なかなか正社員を雇おうとせず、パートや派遣、アルバイトに依存する企業の存在

があるのではないか。こうした環境ではぐくまれた職業観・価値観の多様化、そして希望の喪失。
こうした時代背景によって生まれた現在のフリーター。そして、フリーターは自分探しの旅を続けているのである。しかしながらその旅は出口のないトンネルのようなものではないか。今、そう言わざるを得ない状況に陥っているものは少なからずいるのである。
 現状のように雇用が回復するだけでは、また、個人の自助努力を促すだけでは不十分なのではないだろうか。
 今こそ、自助努力の”場””支援”というものを整備・普及させていくべきであり、それを最優先させるべきではないかと考えるのである。