『生活感(生活における実感)』法学部一年 高野馨太

この国を守る。その深切な心意気は何をもって生まれるのか。おそらく、己の生活を守らんとするその心情にあると私には思われます。たとえば可憐な妻を迎えて子を作り、家庭を持った。この生活を守らねばならぬ。そう決意したある人は、己が祖国、己が生活を守るために立ち上がり、勇ましく戦うのでしょう。そこには彼の「生活」があります。彼は彼の生活を守るために戦うのです。彼の生活を守るために彼の「我が国」を守るのです。そして、そのような男が最も強い。なぜなら彼の意志は彼の生活に確固として根ざしており、彼の生活に対する誠実さは、彼の「我が国」への熱意に率直に表れるからであります。

私は国家、社会のために尽くして生きていけたらと思っています。いざという時に役に立てる男でありたい。そのような頼もしい男になるために、自立して生計を立て、およそ「生活感」を獲得しなければならないのでしょう。今の私にはそう思われてならないのです。やがて私も家庭を持って、自らの生活を築きあげるでしょう。そうして初めて私も一人前の男として己れの守るべき生活とその切実さを理解することができると。大言壮語を吐くよりもまず、自らの生活を作る。家庭を作る。そうしてようよう私にも守るべき国家に対する深切な心意気というものが真に理解されようとも思うのです。それでいて、正直な真に根深いまっすぐな気持ちで国家のために奉仕することもできるでしょう。そうして、知的遊戯でなく、空理空論でなく、行為でもってそれを示すことができましょう。それでいて、真に国家に有為の士たりうるのではないか。そうした、実直なそれぞれの生活を持った国民あるいは臣民が、我が国の歴史を築きあげてきたのではなかったか。

私の研究対象である「国防」の問題意識の契機は何かとつらつら考えてみましたところ、およそ幼少の頃より、先の大戦における大敗北について聞き伝えられてきたことであると自覚するに至りました。つまり、この国を守らねばならない、あのような事態が引き起こされてはならない、ということです。先の大戦では国土が焼け尽くされ、三百数十万の我が国国民が亡くなりました。およそ当時の国民の苦しみたるや察するに余りあります。我が国は敗戦の荒廃した国土から奇跡的な復興を成し遂げて、戦後ながらく平和な世が続きました。これからもこの国を平和に守っていかなければならない。二度と先の大戦の轍を踏んではならない。その務めはもちろん自衛隊防衛省ほかの関係機関にとどまらず、我が国国民が任を負うのであります。私が将来それら安全保障の関係機関に籍を置くかは分かりませんが、何よりも一国民として国家、社会に貢献していけたら真に幸いだと思っております。それにあたって、地に足をつけて、しっかりとした男としてまず自立することが必要でありましょう。浮ついた言説に酔いしれることなく、ひたむきに実直に生きていきたいと思います。