「宝探し」

政治経済学部2年 仲條賢太
年の暮れ、実家に帰った私は、母親から、地元の青山堂という老舗の本屋が倒産していたことを知らされた。
去年、本HP内で掲載した『青い山』というコラムで私が触れたあの青山堂である。
コラム『青い山』→ http://d.hatena.ne.jp/yu-benkai/20070828/p5

店舗を人通りや車通りの多い国道沿いに絞ったものの、業績は振るわなかったようだ。
地元出身の作家のサイン本や、地元の風俗や方言に関する書籍を多く揃えていた、地域の文化を大事にした本屋だっただけに、残念である。

この青山堂の例を見るまでも無いが、地域経済の沈下は深刻なものとなっている。中心市街地は活気が無いし、若い世代の都市部への移動を食い止められずにいる。かといって、特効薬があるわけでもない。近年活発に行われていた企業誘致も、最近の不況で大きく期待することはできなくなってしまった。例えば、北海道の苫小牧市は、積極的に企業誘致を行ってきたが、近年の不況で誘致企業の業績が急激に悪化、市の税収が大きく減少し、財政を圧迫している状態にある。

いま、それぞれの地域は、地域独自の資源を生かして地域を盛り上げていく必要があるのだ。

ここで、こうした事例のひとつを挙げようと思う。

眉山」という映画をご存知の方は多いのではだろうか。この映画の原作者が歌手のさだまさしさんということで一時期話題になったのは記憶に新しい。映画は2006年に徳島市のシンボルである眉山山頂などを舞台にロケを行い、一昨年に公開されたのだが、私がここで指摘しておきたいのは、その経済効果である。
四国経済産業局の試算によれば、「眉山」の経済波及効果は、徳島県内でなんと最大約39億円に上るという。映画のおかげで観光客数は、映画公開後の07年6月から08年2月までの合計で計約11万人も増加した。また、観光客の交通費や宿泊費などの経済波及効果は、阿波おどり期間(07年8月12から15日の4日間)だけで約24億円に上ったという。

ちなみに私の地元の山形県酒田市は、去年公開された映画「おくりびと」のロケ地である。こうした映画を使った地域活性化の重要性は、その経済効果は、もちろんのことだが、地域に縁もゆかりも無い人だけでなく、その地域に住んでいる人にまで、その地域の歴史・伝統・文化・自然などに新たに気づかせてくれることだ。むしろ、私は後者の方が重要なのではないかとさえ思う。

地元の人間というのは、意外と地元のことに無頓着だったり、無関心だったり、知らなかったりするものだ。私も「おくりびと」を観て、初めて知った地元の姿があった。地域住民が地元のことを知って行く中で、更なる愛着が生まれ、地域の魅力は涵養されていくのではないだろうか。地域資源を掘り起こすことで利益を得るのは、他ならぬ地元の人間なのである。

「おもしろくなき世をおもしろく」とは高杉晋作の言葉だが、「何だこんなちんけなところ」とぼやいてないで、気持ちを切り替えてみてはいかがだろうか。あなたの地元にも、思わぬお宝たちが、見つけられるのを待っているかも知れないのだから。