「海洋国家日本に押し寄せるグローバル化という波」

法学部2年 小倉勇磨

日本の文化の大きな特徴の一つとして、他所から取り入れた文化を自国の文化に合う様に変容させ、取り入れるという事がしばしば挙げられる。
 古代から日本は、外国から新しい知識、文化を積極的に取り入れて来た。大陸から渡って来た仏教は、今も冠婚葬祭等様々な面において大きな影響を与えている。また、和食として海外でも大きな人気を誇る天ぷらも外来語である。
 過去に二度存在した開国も共に外圧によるものだった。一回目は、江戸時代の末期にペリーが浦賀に来航した事によって。そして二度目は、太平洋戦争に敗北した日本に、「真の」民主主義をもたらす為にGHQが日本を統治したことによって開国は為されたのである。
 この様に、島国という非常に閉鎖的になりやすい環境に置かれながら、日本は社会のダイナミズムを保って来た。だがそれは、先述したように外国からの影響によって為された部分が大きいのである。

 折しも、現在はグローバル化と言われている様に、他国との「距離」は縮小し、そこから影響を受けることが多くなっている。最近発売されたiPhoneの発売日に、買おうとする人々が長蛇の列を為していたのは記憶に新しいだろう。そして駅から自宅に帰るまでに、マクドナルドやら、ケンタッキーの前を通り過ぎるのも当たり前すぎて今更驚くことでも無い。周りを見渡せばその様なものは沢山存在する。友人に話を聞くと、町中にあるマックやケンタッキーを見て日本は国際化したとの認識を持っている様である。しかし、本当にそう言えるのか。私は疑問を抱かざるを得ない。それは日本経済に占める外資の割合が非常に低いからである。
日本のGDPに占める外資の割合を数値にして表すと2%弱程度でしかない。それに比べて、イギリスは35%と非常に高い割合を外資が占めており、他の欧米諸国も、GDPの20%前後を外資が占めている。このデータを見れば、如何に日本が外資を受け入れていないかが分かるだろう。
 日本企業のアジア進出など、資本のフライトが進む中で、外国から資本が入ってこなければますます産業の空洞化は進んでいく。直接投資を受け入れることは、生産性向上や雇用創出など、プラスの影響を日本経済に与えるだろう。従ってM&A投資のような形で、日本への直接投資をどんどん受け入れていく必要がある。そのためにも、現在の投資への規制等見直す必要があるのではないか。
日本への直接投資に際して大きな規制となるのは医療や教育等、様々な分野に対する新規参入規制や、それらの業種に対する外国人株主による10%以上の株式保有制限などである。これらの規制は他国と比べて厳しいものとなっている。実際に、対内直接投資を多く受け入れているイギリスでは、規制対象となる分野が航空取引と漁業の2業種のみと、規制範囲は非常に狭い。規制の範囲を見直す必要があるのではないだろうか。
だが、規制の見直しに当たって大きく問題となるのが、安全保障の問題である。最近、TCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント)のJpower(電源開発)買収問題が問題になった。このとき政府の出した答えは、安全保障上の懸念から投資を規制せざるを得ない、ということであった。電力事業のように国家の安全保障に重要なインフラを外資によって支配されるのは問題があるということである。確かにこれはもっともである。又、電源開発原発事業にもかかわっており、今回の規制は当然ともいえる。
だが、一部海外メディアが指摘するように、不透明な法運用をしてはならない。安全保障という概念は多岐にわたり、非常に曖昧である。安全保障という言葉を濫用し、徒に外資規制をするようなことがあってはならないだろう。そのようなことがあれば日本に入ってくる直接投資はますます少なくなってしまうに違いない。
先にも述べたように、海外からの直接投資の増加は日本経済に対し大きなメリットを齎してくれる。このことを踏まえ、明確で公正な法整備・運用がなされなければならない。