コンテンツ「日本の揺らぐ食卓を護るために」②

法学部1年 加藤洋平

前回のコンテンツ第一弾では、世界での食糧需給の逼迫が日本にもたらしているリスクについて現代の時代認識から位置付けて問題提起した。そして、私がこの問題の解決の先に求める理想社会とは、日本に住む個々人が物質的、精神的に豊かさを感じることのできる社会であると言うことをここに示しておきたい。このような社会に我々の社会を導くには何を為すべきかという方法論は次回のコンテンツに先送りして、今回はそのような社会の実現を妨げている日本の脆弱な食料安保の問題構造分析を掘り下げてしていきたいと思う。


〜世界の穀物市場〜

そもそも穀物は食糧という性格から(当たり前ではあるが)、穀物生産大国であったとしても国内市場が優先されるため、生産量に対して貿易に供される量は約8分の1である。輸出国も主にアメリカ、カナダ、オーストラリア、南米に限られる。このような性質から世界の穀物市場は異常気象などのリスクに元々脆弱であるということができる。その一方で輸入国は日本、中国、韓国などアジアに偏重しており、トウモロコシ、大豆、小麦の3品目におけるこれらの国の輸入量は世界の層輸入量の約27パーセントを占める。脆弱な世界の穀物供給体制の被害を1番受けやすいのがこれらのアジア諸国だということだ。

それに加え穀物生産を阻害する地球温暖化がもたらすエルニーニョ現象ラニーニャ現象などの異常気象が近年加速度的に発生頻度を増している(この両現象は干ばつの原因になるといわれている)。現に2002年、2006年のオーストラリアでの大干ばつにより、その国における小麦の生産量はそれぞれ前年の半分まで落ち込み、その後の穀物価格高等の要因の一つになっている。また2006年は北半球と南半球の干ばつ同時発生が起きた年でもあり、規模をとっても拡大してきていると言えるだろう。


〜日本の食料生産〜

干ばつなどの何らかの要因により日本が食料を確保できなくなる、あるいはその量が激減する、このような不測の事態のセーフティーネットとなるのが日本の農地である。農地を取っておけば、不測の事態が起こったとしてもカロリーベースで高い農作物を生産することができ、食料自給率は向上する。すなわち、農地を取っておくこと=食料自給力を確保することなのである。しかし、現在日本の農地は年々減少している。

2006年度の農林水産省「農林業センサス」によるとそれがよく分かる。1990年には約420万ヘクタールあった経営耕地面積が、2005年には60万ヘクタール減って約360万ヘクタールまで減少している。日本の耕作面積の減少は1980年代前半で年間約1万5千ヘクタールであったが、1990年代には約2万5千ヘクタールで推移しており、その現象の速度も速まっている。

その減少の中でも農業従事者の高齢化、担い手不足という要因を背景に半分以上というとりわけ大きい割合を占めるのが耕作放棄である。耕作放棄地は年々増加の一途をたどり、耕地面積における耕作放棄地の割合は1990年の3.5パーセントから、2005年には9.7パーセント、面積にして15万ヘクタールから38万ヘクタールにまで膨れ上がっている。ちなみにこれは埼玉県や滋賀県の面積と匹敵する。

このようにそもそも構造的に異常気象の影響を受け易い世界の穀物供給体制が、地球温暖化による異常気象の頻度、規模の増加により更に脆弱なものとなり、またこのような不測の事態に陥った際のセーフティーネットである日本の農地(日本農業)も耕作放棄地の増加によりその機能を果たせるとは到底言えない状況なのである。

このように今回のコンテンツでは日本の脆弱な食料安保の構造を分析してきた。次回のコンテンツではこのような複雑に絡み合った問題にどこから、どのようにメスを入れ、解決に導いていくかについて発信していきたいと考えている。