コンテンツ「現代の食料情勢を考える」①

法学部1年 小倉勇磨

最近母がよくぼやく。「食費が高くなった」と。どうやら最近食べ物の値段がどんどん高くなっているみたいだ。どうしてだろう。日本に生まれて18年、食べ物に困ることなんかなかったし、これからもそうだろうと高をくくっていただけに、母の言葉が重く感じられた。どうしても気になったので新聞をみてみると、「政府が小麦の売り渡し価格を値上げ」という小見出しが目に付いた。菓子パンが大好きな僕にとってこれまた衝撃的なニュースだったのだが、どうやら記事をよく読んでみると、小麦の市場価格がどんどん高騰しているらしい。小麦だけにとどまらない。今穀物をはじめとしてさまざまな食べ物の値段が高くなっている。穀物を食べて育つ牛や豚や鶏、そして牛乳。なぜこのようなことになっているのだろうか。その背景を現代社会から読み取ってみる。
現代社会はグローバル化、すなわち流通、情報技術の発達により貿易、国際金融取引が流動化した社会である。このような時代において、途上国は急激に経済成長を果たし、そこでは人口爆発、食生活の変化が発生している。さらに工業化した開発途上国の成長により多量のCO2が排出され、地球温暖化が世界的イシューになっている。これらのことが帰結するところは、食糧需給の逼迫である。需給が逼迫すれば当然食糧価格は高騰するが、さらに石油値上がり、サブプライムローン問題に端を発する投機マネー流入などで食糧価格の高騰はとどまることを知らなくなっている。当然日本にもその影響は及んでいる。

つまり需給が逼迫しているのみならず、そこに投機マネーも入り込んでいるから価格が高くなっているのだ。しかし問題は価格が高くなっていることだけではないらしい。さらに調べてみるともっと恐ろしい事実が浮かび上がってくる。

また近年多発する異常気象が、ますます脆弱になった食糧市場に与える影響も大きい。ひとたび異常気象が発生すれば(近年は世界の数箇所で同時に発生する事例も発生している)一気に供給不安に傾く可能性があるからである。食糧自給が39%と非常に低い日本にとってこのことが意味することはあまりにも大きいだろう。日本の食糧安全保障に危機が生じており、供給不安に備えてある程度国内で自給率を上げていくことが求められているのである。

そうなんだ、今の日本は、外国の食べ物無しではやっていけないほど食糧自給率が低いんだ。唯一自給できているのがお米くらいで後はほとんどアメリカやオーストラリア、中国に頼っているというのが今の現状。つまり外からの供給が絶たれてしまえばあとは死を待つのみ。いや、これはちょっと大げさかもしれないがとにかく今の日本は外国に大きく依存しすぎている。異常気象による影響を考えると、もう少し自給率を上げられないものかと考えざるを得ない。だけどそんな簡単にはいかないらしい。それは現在社会がグローバル化だけじゃなくってリージョナル化も同時に進行しているからなんだ。どういうことかって言うと・・・

現在はグローバル化と共にリージョナル化も進行しているが、ここで締結されるEPAによって日本の食糧自給率はますます低いものとなる。しかし、バイラテラルな貿易交渉においては貿易転換が生じるため、結果としてEPAの不締結が国益の損失につながる可能性が高い。

つまりEPA(経済連携協定)が結ばれて農業自由化が行われれば、外国産の食べ物は安いので、日本の農業が競争に負け、衰退してしまうかもしれない。じゃあ結ばなければいいのかと言うとそれは違う。なぜなら貿易転換が起きてしまうから。関税が安い国と高い国どっちとたくさん貿易をした方が得かというとそれはやはり関税の安い国。つまりEPAを周りの国がどんどん結んでいるのに日本だけ結ばないでいると日本が貿易で損する可能性、つまりリスクが高くなってしまう。

じゃあどうするべきなんだろうか。今の日本は最近問題になっているようなワーキングプアをはじめとして相対的貧困層の人が数多くいる。食が人間が生きていくうえで必要不可欠なものである以上、最近の食品価格の値上がりは、彼らをますます困窮させることになってしまう。僕が思うに、今日本が目指すべき社会は「日本国民が生活の質を維持、向上させることのできる社会」であるべきだ。そうすると今やるべきことは進んでEPAを締結して、関税を引き下げ、自由化を行って、食品価格を引き下げることだ。内閣府の調査では自由化を行えば3兆3000億円もの新規消費が生まれることが明らかになっている。
そうなると問題になるのがやっぱり国内農業だろう。そしてさらに異常気象等による供給不安のリスクを考えると、国内農業をどうやって強化していくべきかが問題になる。つまり、自由化によって流入してくる外国産の作物に勝てなくとも負けない農業を育成することが今の日本にとって重要なのだ。