コンテンツ「日本の揺らぐ食卓を護るために」①

法学部1年 加藤洋平

去年のクリスマスイブ、2日前に弁論大会を終え、束の間の休日気分を味わっていた私は夜10時に目を覚ます。そして暖かいフライドチキンがあるわけでもなく、お祝いのクリスマスケーキがあるわけでもなく、私は散らかったキッチンの中のカップ麺に手を伸ばし、お湯を注ぎ、クリスマス特番を見ながら麺をすする。一人暮らしの独り者のなんとも淋しいクリスマスイブである。しかし、左手に持ったカップ麺を見てこれが来年から値上げされるということをふと思い出す。苦学生にとってほんの少しの値上げも痛い、そう感じたのを覚えている。

さて、この1つのちっぽけなカップ麺からは現代の大きな時代潮流がまじまじと読み取れる。

私たちの住む現代社会は、冷戦構造の崩壊による東西イデオロギー対立の終焉、技術革新による世界の空間的、時間的縮小が実現し、世界に単一市場が創出され、端的にグローバリゼーションという言葉で表現される。市場原理に基づきWTOの多角的自由化交渉やFTA・EPAなど地域的な自由化交渉に見られる規制緩和が進み、世界における相互依存は一層深化していると言える。そのような世界では国際的な分業体制が確立されており、食料自給率がカロリーベースで40パーセントにも満たない日本で食料を確保できるのもこの分業体制があるが故のことなのである。

しかし、私たちはこれにもはや依存できない。なぜなのだろうか。

現在、中国、インドの人口爆発による穀物輸出国から輸入国への変遷、また新興国、特に年率10パーセント以上の経済成長を続ける中国における菜食中心から肉食中心への食生活の移行、さらにはアメリカなどで劇的に増大するバイオエタノール生産、これらの要因によって世界の穀物に対する需要は急速に伸びている。この世界的な穀物需要増大に対して供給が着いてこられていない。2005年度の穀物消費量は6億1000万トンであるのに対し、生産量は5億8000万トン程度であり、在庫が切り崩され、2000年では37パーセントであった世界の期末在庫率が現在では15.2パーセントにまで下落しているのである。この供給の伸び悩みの1番の要因は地球温暖化による影響である。地球温暖化エルニーニョ現象ラニャーニャ現象の発生頻度を増加させ、またそれらの減少は干ばつを招く。元世銀のチーフエコノミストニコラス・スターン氏のレポート、スターン・レビューによれば、地球の表面温度が1度上昇するごとに世界の食糧生産は10パーセント阻害されるとの報告もなされている。

食料自給率が40パーセントに満たない日本にとって、この食料需給の逼迫は食料安全保障上死活的重要な問題であると言え、日本に住む私たちの生活を大いに脅かすものだと言えるだろう。

カップ麺値上げの裏側には世界の食糧需給逼迫という壮大なストーリーが隠れているのである。そしてそれは単なる値上げだけでなく日本に食糧危機のリスクさえ齎しているのである。

私のコンテンツではこの事態を日本がどのように打開し食糧安保強化を図っていくか、それを考察し、自らの政策を提言していきたいと考えている。