「幸福の前に立ちふさがるもの」

教育学部1年 岩本慧

「高齢」社会

 この言葉が特別珍しくともなんともなくなって久しくなっている今日。私がまだ小学生位だった頃は、「高齢化」社会と言われていたことを記憶しています。

現在、平成19年度版高齢社会白書によると、日本の65歳以上の高齢者の人口は2660万人。つまり、国民の5人に1人は高齢者の方々です。高齢化率は“20.8%(前年度20.1%)。高齢化率が21%以上の社会を「超高齢化」社会と定義するそうです。そして2010年には高齢化率は23.1%になると予測され、日本は、

「超高齢」社会

の到来を迎える・・・と言われています。

 しかし、いま一つピンとこないでしょう。「高齢」社会とか、「超高齢」社会と言われても・・・・しかし、目には見えない問題が、今我々の往く未来に横たわっているのです。その問題とは、独居高齢者の社会的孤立状態です。

 その状態とは一体どのような状態なのか?それは、家族、近隣との関わり合いから断絶した状態のことを指します。
ではその状態がどれほどの危険を孕んでいるのか?生活していくうえで誰しもがリスク、例えば急な病気や怪我など一人ひとりそれぞれ抱え、もしくは抱える可能性を持ちながら生活しています。高齢者の方々は、高齢のために生活に生じるリスクはさらに増大し、一人で解決することが困難で他者からの助けの必要性が増大します。ですが、社会的孤立状態に置かれている高齢者の方々は、孤立しているがために、その人は生活に生じるリスクすべてを一人で背負わなくてはならず、その人にとってかなりの負担を強いられています。OECDの2005年のデータによると日本は、調査対象国20カ国中、人々の社会的孤立が最も高い国とされ、別の調査では現在一人暮らしの高齢者の4人に1人は社会的孤立状態におかれているというデータもあるのです。
社会的孤立状態における最も恐ろしいリスク・・・・そう、孤独死というリスクが近年増加しています。孤独死とは、主に一人暮らしの社会的孤立状態に置かれた高齢者が誰にも認知されず、読んで字のごとく「孤独」に「死」を迎える、当人の住居内で生活中の突然の疾病などの突発的なリスクの顕在化によって誰にも助けを呼べずに死に至ってしまうことです。「高齢」社会の進行から、潜在的孤独死者も増加していく傾向にあるのです。

 そして日本は、世界でもトップクラスの長寿大国。平均寿命は女性が86歳、男性が79歳で世界第2位です。このことから、我々の大半は高齢者になることは自明であり、「高齢」社会の進行は、少なからず我々にもいずれその問題に直面する可能性を物語っています。

 当コラム「幸福論」では、高齢者の社会的孤立状態はなぜ生じ、そしてその解決のためにはどうしたらいいのかについて考察していきます。